研究課題
ブラッグエッジ透過法では、鉄鋼材のマルテンサイトを、格子面間隔に分布があるとして評価し、鉄の硬さ分布と分散幅に相関があり、分散幅の変曲点が焼き入れ厚さと一致するという新しい結果を得た。日本刀の焼入れ部分も特定することができた。また、ひずみ情報CTのために、新概念CT画像再構成アルゴリズムを中性子回折法用国際標準試料「VAMAS」に適用し、軸対称のひずみの断層分布を再構成することに成功した。共鳴吸収法では、J-PARCのパルス関数を共鳴解析コードREFITに実装し、スペクトルの解析が可能となった。水素吸蔵合金内に吸蔵された水素の挙動を明らかにするために、水素吸蔵前(0H/M)、水素化物相(0.6H/M,1.6H/M)の3試料について透過測定を行い、合金内の水素吸蔵量が増すにつれて、長波長領域で全断面積値が顕著に増加することが分かった。透過スペクトルの傾きは水素の非干渉性非弾性散乱と吸収の断面積に起因し、傾きの違いから水素吸蔵量の増加と共に合金内の水素の拡散状態が異なることが示された。磁場イメージングでは、中性子スピンの量子化軸を3次元的に制御することにより、観測対象の磁場の方向を検出する「磁場ベクトル解析」に関する試験を本格的に開始した。磁気シールドを導入することにより、環境磁場を地磁場の1/100程度まで低減させることができ、スピン量子化軸の高精度な制御が可能になった。有限要素法による磁場計算と偏極度シミュレーションを開始し、実験結果から求められた磁場ベクトルの定量性に関する検証を進めた。検出器開発では、中性子イメージインテンシファイアと高速カメラを組み合わせて10μsの高時間分解能で画像を積算収集して連続的に記録していくシステムを開発した。GEM検出器については、さらに高速な読み出しを達成するための検出器躯体と読み出し基板の開発を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
研究は順調に進捗しており、新しい知見も得られている。特に、焼入れ鉄のマルテンサイト相の解析手法の開発では、格子面間隔に分布があると仮定して、新たに開発を進めることによって、従来の解析では格子面間隔が異常に大きかったという問題を解決できただけでなく、分布の半値幅がビッカース硬さと相関があるということを非常にクリアーに示すことができた。今後の材料評価における大きな貢献が期待できる。また、テンソル量であるためにCTが非常に難しい歪について、軸対称の標準試料ではあるがCTに成功したことは、もう一つの大きな開発成果である。磁場イメージング、検出器開発などの上記以外の研究テーマについても着実に成果が出ており、総体的には予想以上の成果がでていると考えられる。
平成26年度は、以下に述べるように、これまでの研究を継続発展させるとともに位相コントラスト法について試験研究を行う。構造情報イメージングとして、これまで進めてきた、ブラッグエッジイメージングに関して、ひずみ分布のCT化に関して非軸対称分布への拡張、強加工材や文化財への応用、小角散乱法の開発などを継続して行う。共鳴イメージングは定量測定法の確立のための実証実験などを進める。磁気イメージングは3次元分布の再構築に主眼を置いて解析手法の開発を進める、また、位相コントラスト法について試験研究を開始する。含水素物質に関する研究では、水素貯蔵合金に関する測定結果についてさらに解析を進めるとともに、応用分野の拡大を検討する。検出器開発では、GEM型検出器については、これまで購入したパーツを組み合わせ信号の確認等を行う。また、検出効率の向上を目指して、ボロン付多孔コンバータータイプの性能を評価する。カメラ型については、高速度カメラの3種のスピードに対応した画角変更システムを製作し、カメラ特性を評価するとともに飛行時間測定を行う。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (41件) (うち招待講演 8件) 備考 (1件)
Physics Procedia
巻: 60 ページ: 254-263
10.1016/j.phpro.2014.11.035
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Jounal of Physical Society of Japan
Mat. Sci. Forum
巻: 43 ページ: 92,99
10.1016/j.phpro.2013.03.012
巻: 43 ページ: 360,364
10.1016/j.phpro.2013.03.043
巻: 43 ページ: 86,91
10.1016/j.phpro.2013.03.011
http://toybox.qe.eng.hokudai.ac.jp/kakenhi_S/index.html