研究課題
目的は、0.3~10THz可変、短パルス10MW以上、数十uJ/pulse放射の超小型高輝度コヒーレントTHz光源研究開発とその応用研究である。H23年度夏以降の本研究開発でフェムト秒レーザーシステムの仕様を決定して、H24年3月装置納品・性能検査を行った。さらに光高周波電子銃に入射できるシステムに構築する必要があるので、H24年の秋に最初のフェムト秒電子ビーム生成実験を行えるように準備を進めている。一方、光高周波電子源の開発ではRF Gunの電子ビームエネルギーを上げることによって、ウィグラーからの超放射がより安定になることがシミュレーションにより明らかになったので、1.6cell RF Gunを3.6cell RF Gunに置き換えてバンチ長10psecの電子ビーム生成実験を行った。そして、9.6MeV以上の電子ビーム生成に成功した。H24年秋までに10MeV以上のフェムト秒ミクロバンチ列生成が可能になるように高周波電子源のRF Agingを継続する。また、THz放射装置のウィグラー開発に関して、大阪大学産業科学研究所の協力を得て遠隔Gap制御可能タイプのEdge Focus Wiggler設計を開始した。さらにロシア・トムスク研究所のCoherent Diffraction Radiationの専門家と議論した結果、小型ウィグラーの代わりに周期場を提供できる結晶(Grating plate)でスミスパーシェル放射を利用すれば、より強力なコヒーレントTHz超放射が期待できることをシミュレーションで示すことになった。この実験も可能になるように真空装置の設計を開始した。本光源によって、THz時間領域分光(THz-TDS)の測定時間の大幅な短縮、測定精度の大幅な向上が可能になるので、H24年度中にTHz応用に関する研究会を開催する予定である。
2: おおむね順調に進展している
Coherent THz放射に必要なフェムト秒電子ビーム生成を行う準備として、フェムト秒レーザー発生装置のTitanium-Sapphire laser system購入とそのフェムト秒光学システムの構築が進み、H24の夏からフェムト秒レーザー運転が可能になる。高周波電子銃の製作・運転準備も順調に進んでいる。
10Hzで運転可能なフェムト秒レーザー発生装置Titanium-Sapphire laser systemを構築して、波長800nmで10mJ/pulse生成運転を行う。フェムト秒レーザー16パルス列生成は、半波長板(1/2λPlate)によってS偏光を45度回転した後に偏光ビームスプリッター(PBS)で反射・通過させるとフェムト秒レーザーパルスが二つに分かれる。通過したS偏光パルスはOptical delay lineによって100fsec程度遅らせる。再度PBSを使ってP偏光パルスとS偏光パルスを合流させると、フェムト秒レーザー2パルス列が生成できる。これを4回繰り返して、フェムト秒レーザー16パルス列生成を行う。平成24年度は4パルス生成した800nmレーザーの3倍高調波266nmを光高周波源カソードに照射して、フェムト秒電子ミクロバンチ列の生成を確認する。高周波空洞内で生成光電子の時間構造を保存して加速するためには、クーロン反発力に打ち勝ちかつ動力学的にバンチ圧縮が生じる高周波位相に乗せる必要がある。光陰極高周波電子銃のカソード端板は空洞の高電界が発生する位置に固定されている。加速電界が増加する位相(20度)で50fsecミクロパルスがカソードに照射された場合、S-band(2856MHz)高周波加速電界(130MV/m)は44.46から44.68MV/mまで変化して、後続の光電子は少し大きな加速を得て動的なバンチ圧縮と同時に急速な加速が行われ、相対論的なエネルギーに近づくことによってクーロン反発力とローレンツ力が釣り合うようになる。先頭のミクロパルスと最後のミクロパルスの時間差は8psec程度であり、位相差で8度程度である。加速電界では61,03MV/mまで増加するので、8psecのミクロバンチ列が高周波電子源出口で30%程度バンチ圧縮を受けることになる。装置構築が順調に進めば、電子ミクロバンチ列構造をCDR測定によって確認する予定である。
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IOP Science, J.Phys. : Conf.Ser.
巻: 357 ページ: 012035-1,012035-4
10.1088/1742-6596/357/1/012035
巻: 357 ページ: 012038-1,012038-5
10.1088/1742-6596/357/012038
http://www-atf.kek.jp/thz/index.html