研究課題
THz波長に合ったマイクロバンチ間隔制御可能なマイクロバンチ列生成及び加速に成功した。本研究計画では、ミクロバンチ列をフェムト秒レーザーパルスと高電界高周波電子銃空洞によって、生成・加速するので非常に効率よくウィグラー内でTHz波の超放射が起こり、放射パワーの飽和に必要なウィグラーの長さは10分の1程度になり、より安定なTHz波光源を実現できる。本THz波光源の安定性は、フェムト秒レーザーパルスと高電界高周波電子銃空洞の安定性に依存する。また、放射パワー強度は高周波空洞内の電界強度に依存するので、120MV/m以上の最大電界で空洞を運転できればピークパワー10MW放射は実現できる。現在精力的に開発が進められているTHz-FEL(自由電子レーザー)発振装置と比較しても、非常に魅力的で独創的なTHz波光源の研究開発である。Ti-Saモードロック発振器、ストレッチャー、再生増幅器、マルチパス増幅器、圧縮器、3倍高調波発生器等を調整して、基本波795nmの性能を安定に再現できるようになった。3倍波265nm生成に関しては問題を克服して、0.608mJのレーザーパルス生成が可能になり、2ミクロバンチ列及び4ミクロバンチ列生成・加速を行った。それぞれのミクロバンチ長は100fs程度で、ミクロバンチ間隔も150fs程度に調整できることを確認した。Cs-Teフォトカソードの光電効果応答速度が数十fs以下であることが初めて測定され、本報告に関する論文投稿準備を進めている。現在、カソード照射レーザーパルス長が100フェムト秒であり、50フェムト秒に短縮する調整が残っている。また、最近の電子ビームトラキングシミュレーション結果から、超小型の高性能電子加速器による高輝度THz発生装置が実用化できる確実な見通しを得た。
3: やや遅れている
フェムト秒レーザーパルスから3倍高調波を作る非線形結晶等の調整が順調に進まなかった為に、100f秒電子ビーム生成が2014年4月まで遅れた。3倍高調波発生で使用するBBO結晶の結晶軸に関係する問題が明らかになり、急いで新しい3倍高調波発生器を購入して3倍高調波発生実験を行い、0.6mJ/pulse、安定性1.35%、最大変換効率3.8%の結果を2014年2月末に得るに至った。フェムト秒レーザー生成で予想外の装置調整が必要になり、またレーザー室から10m以上に及ぶ高周波電子源光カソードまでのレーザー輸送でディスパージョン効果によりレーザーパルス長が50fsから100fsまで延びることも明らかになった。これらの問題を克服して、電子ミクロバンチ列生成・加速試験を2014年6月に行い、ミクロバンチ列生成・加速に成功した。また、フェムト秒単バンチ電子ビームの生成およびTHz放射測定により電子ビームサイズ等の確認も行った。以上から研究計画のフェムト秒電子ビーム生成スケジュールの遅れを除けば、ほぼ申請書の計画案通りに進んでいる。ただし、最も重要な結果である超放射測定の時期が半年程度遅れることになってしまった。
THz放射実験が可能になったので、装置の性能を上げながら、応用実験を開始する。既存の光陰極高周波電子銃で16ミクロバンチ電子ビーム生成およびその測定実験を行う。平成27年度以降は、THz時間領域分光(THz-TDS)の光源としての応用実験、THz非線形光学実験や分析イメージングを専門家の協力を得て進める。研究目的の達成見込み:超放射の確認は確実に行える。0.3から3THzの発生も現状の実験装置の完成度から確認できる。最も重要なのはピークパワー10MW以上発生の確認である。この確認は利用実験を試験的に進める平成27年度後半に行うことになる。問題は電子ビームの品質がスペースチャージ効果によりシミュレーションで期待した値より10倍以上悪くなった場合、ウィグラー電磁石内で電子ビームロスが発生する。この場合、バンチ当りの電荷量を少なくして、ウィグラー電磁石のテーパーによる横方向収束力による対策によって、このような問題は克服できる。最も重要なことは、光陰極高周波電子銃の最適運転条件を系統的に調べて、その状態を安定に維持する技術を確立することである。この点、我々のグループは世界的に評価されている運転技術と計測技術を既に持っているので、本研究の目的はほぼ達成できる見通しである。さらに最近、穴開き電磁波共振器とCDR(コヒーレント回折放射)現象を利用したTHz光源の強度計算を行った結果、十分に実用的な高強度光源になることが分かったので、ウィグラー電磁石による高品質電子ビーム劣化が問題になる場合は、CDR-THz光源装置開発を推進する。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 9件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (11件) 備考 (3件)
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