研究課題
基盤研究(S)
申請者は、高度不飽和脂肪酸(PUFA)が欠乏した線虫(脂肪酸不飽和化酵素が欠損)では、エンドサイトーシス異常、上皮系細胞の接着異常等、様々な異常を来すことを見出している。また、脂肪酸合成系の遺伝子の多重変異体を用いることにより、培地に加えた脂肪酸がそれ以上代謝されないPUFA欠乏線虫も確立している。そこで、これらのPUFA欠乏による異常がどのPUFAで回復できるか(言い換えれば、どのPUFAを必要とするのか)確立したPUFA欠乏線虫で調べたところ、エンドサイトーシス異常は様々なPUFA(18:3n-3、20:3n-6、20:4n-3、20:4n-6、20:5n-3)で回復がみられたが、上皮系細胞の接着異常は、20:4n-6と20:5n-3でのみ回復がみられた。興味深いことに、上皮系細胞の異常は20:4n-3では全く回復せず、脂肪酸鎖長や不飽和度のみならず、不飽和結合の位置が重要であることが示唆された。すなわち、カルボキシ末端から5番目の位置(Δ5)に二重結合があることが、上皮系細胞の異常の回復に重要であると考えられた。また、PUFA欠乏線虫でみられる表現型がどのリン脂質に含まれるPUFAの欠乏により引き起こされているか、ホスファチジルコリン(PC)に選択的にPUFAを導入するLPCAT3(mboa-6)、ホスファチジルイノシトール(PI)に特異的にPUFAを導入するLPIAT(mboa-7)の欠損変異体を用いて調べた。その結果、エンドサイトーシス異常はPC中のPUFA欠乏により、上皮系細胞の接着異常はPI中のPUFA欠乏により引き起こされていることが明らかとなった。これらの結果は、リン脂質種特異的な脂肪酸鎖の生物学的意義を初めて示したものである。
2: おおむね順調に進展している
期待に通りの研究成果が得られ、今年度に設定した研究の目的をおおむね達成することができた。
引き続き当初の研究計画とおりに研究を推進する。
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