研究課題
これまでの解析からUPRセンサータンパク質IRE1は、膜リン脂質脂肪酸鎖の恒常性に関わることが明らかとなってきた。本年度では、IRE1の下流で起こるXBP1非依存的なシグナル経路の解析を行った。申請者はまず線虫を用いたマイクロアレイ解析を行い、ツニカマイシン処理によりIRE1依存的に発現上昇する遺伝子の90%はXBP1依存的だが、PUFA合成変異体ではIRE1依存的に発現上昇する遺伝子の30%はXBP1非依存的であることを見出した。これらの遺伝子について定量PCRで検証したところ、31個の遺伝子を同定した。これらのうち、発現抑制によりPUFA合成変異体の表現型を増強する遺伝子も見出しており、恒常性維持におけるXBP1非依存的なシグナル経路の重要性が示唆された。一方、哺乳動物では飽和脂肪酸添加によりIRE1が活性化することが知られている。哺乳動物細胞ではIRE1の発現抑制により飽和脂肪酸毒性が増強した一方、XBP1の発現抑制では増強しなかった。そこでマイクロアレイ解析を行い、飽和脂肪酸によってIRE1依存的、XBP1非依存的に発現上昇する遺伝子としてある種のキナーゼ複合体のサブユニットを同定した。また飽和脂肪酸によってIRE1依存的にこのキナーゼ複合体が活性化することを見出した。詳細な解析の結果、IRE1はキナーゼ複合体を介して、飽和脂肪酸の不飽和化を促進し、細胞内脂質の恒常性を維持していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
膜リン脂質脂肪酸鎖の恒常性に関わるシグナル経路とその生物学的重要性を明らかにすることができた。この結果から、膜リン脂質脂肪酸鎖の恒常性維持機構の解明がさらに進むことが期待され、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
今後は、膜リン脂質脂肪酸鎖の恒常性の破綻による病態とその分子機構の解明について、研究を推進していく予定である。
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