研究課題
F1の蛋白生阻害因子であるinhibitory factor-1 (IF1) の阻害機構の分析を顕微鏡1分子解析により行った。その結果、IF1 は、F1の回転をATP加水分解待ちの90°で停止させることが明らかになった。興味深い事に、阻害に陥っているF1の回転子を外力(磁場)によりATP加水分解方向に強制回転させようとしても回転子は回らないが、逆のATP合成方向には回転できる事が見いだされた。また、このATP合成方向への強制回転により、高い効率でIF1による阻害が解除される事が判明した。この結果は、IF1はATP加水分解反応のみを阻害し、ATP合成反応は阻害しないという生化学的分析結果をうまく説明する。つまり、ATP加水分解方向へはATP加水分解により発生したトルクがかかっても回転できずに阻害から解除できないが、ATP合成時にはFoからのATP加水分解とは逆向きの回転トルクにより回転でき、その回転により阻害が解除されると解釈できる。上記のようにヒトF1を使って様々な分析を行ってきたが、現在利用できるF1の結晶構造データーはほとんどがウシF1であり、ヒトF1は未決定であるため、ヒトF1の構造-機能相関には限界があった。そこでウシF1の分析システムを新規に確立し、詳細な構造機能相関分析を行う事を試みた。まず、ウシtotal RNAからF1を構成している5種のサブユニットと2種類の分子シャペロンの遺伝子をクローニングし、大腸菌の発現ベクターに導入した。様々な培養・精製条件を検討した結果、ウシF1を大腸菌内で発現させ、精製する手法の確立に成功した。次に、ウシF1の回転子に2つのcystein残基を導入し、ヒトF1と同様に顕微鏡1分子観察により回転観察を行った。その結果、ウシF1はヒトF1と同様に毎秒約630回転で高速に回転する事が判明した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.kyoto-su.ac.jp/more/2014/305/20141006_news.html