研究概要 |
炭素-窒素結合合成酵素に関して、C-N三重結合を形成する反応を触媒する(Pseudomonas chlororaphis B23株の)アルドキシムデヒドラターゼ(以下OxdA)の構造機能解析結果を以下に記載する。 種々の沈殿剤を用いてハンギングドロップ法により、OxdAの結晶化を試みた。硫酸アンモニウムやグリセロールの沈殿剤を使用した時に、赤色を呈した結晶が得られた。本OxdA結晶にX線を照射することによって1.8Åの解像度で立体構造を決定した。活性中心のヘム鉄から6Å以内のdistal側には、(先行研究で既に明らかとなっているH320以外に)E143, S174, R178, S219, Q221, Y234, N279 が位置し、反応機構に関与する可能性のあるアミノ酸残基の候補と推測された。これらをアラニンに置換した変異酵素の発現プラスミドを各々構築し、大腸菌で発現させた。DEAEカラムクロマトグラフィーまでの精製ステップで、E143A, H169A, S174A, Q221A, Y234A, N279A変異体に関しては活性が著しく減少するものはなかった。しかし、E143とQ221は必須アミノ酸との間で水素結合を通して触媒に関与する可能性があるため、E143A,R178A,S219A,Q221A変異体を各々完全に精製した。E143AとQ221Aは酵素活性が低下しなかったが、R178Aは野生型OxdAの約20%に活性が低下し、S219Aは酵素活性が認められなかった。S219A変異導入はヘム含有量や二次構造に影響を与えないにも関わらず、酵素活性が消失したことから、OxdAによる炭素-窒素三重結合形成反応においてS219は重要なアミノ酸であることが示唆された。
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