研究課題/領域番号 |
23228002
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小林 達彦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70221976)
|
研究分担者 |
熊野 匠人 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70585025)
橋本 義輝 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00323254)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 微生物 / 酵素 / 代謝 / 精製 |
研究実績の概要 |
炭素-窒素結合分解・合成酵素群の中で、(他の酵素に関しては継続して研究を進めているが)現在、細胞壁合成に関わる酵素による有用物質生産、およびニトリルヒドラターゼとは異なるタイプのニトリル水和酵素に関して得られている成果について以下に記載する。 グラム陽性菌細胞壁のテイコ酸のD-アラニル化に関わる初発酵素はチオエステル結合形成反応を触媒するが、本酵素がペプチド(C-N)結合形成能も示すことを発見していた。 そこで、D-アラニンを様々なL-システイン類似化合物と反応させ、反応の進行が認められた場合には反応産物の分離および同定を行った。アミノ基もチオール基ももたないシステイン類似化合物、あるいはアミノ基はもつがチオール基をもたないシステイン類似化合物の時には、いずれも反応は進行せず、一方、アミノ基をもたずにチオール基のみをもつ類似化合物の時には産物がチオエステル結合化合物と同定した。チオール基および一部保護されたアミノ基をもつシステイン類似化合物の時には、チオエステル結合化合物、アミド化合物の順で産物が検出された。これらの結果を基に、本来の酵素反応によりS-アシルL-システインが中間体として合成され、続く化学的なS→Nアシルシフト反応によりN-アシルL-システインが合成されることによってペプチド(C-N)結合が形成されることを実証し、新規な酵素-化学カップリング連続反応機構として提唱した。 ニトリルヒドラターゼとは異なるタイプのニトリル水和酵素についても検討を行った。本ニトリル水和酵素の発現プラスミドを構築し、大腸菌を宿主として大量発現系を構築した。各種クロマトグラフィーにより精製を行い、精製標品を用いて本酵素の物理化学的諸性質の一部を解明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来はチオエステル結合形成反応を触媒する酵素(グラム陽性菌細胞壁のテイコ酸のD-アラニル化に関わる酵素)がペプチド(C-N)結合形成能も示すことを発見していたが、今年度は、その触媒反応機構について詳細に解析することでユニークな反応機構を解明することに成功し、これまでに報告例のない酵素法による新たなペプチド合成法として提案した。 ニトリルヒドラターゼとは異なるタイプのニトリル水和酵素についても、本酵素の大量発現系および精製方法を確立し、本酵素の諸性質を一部解明した。 さらに、炭素-窒素結合合成酵素において、本来の基質アルドキシムに作用する脱水反応とは異なり、過酸化水素に作用する活性を見いだすことにも成功し、おおむね順調に進展している
|
今後の研究の推進方策 |
ニトリル前駆体アナログ代謝能を持つ微生物については、決定した最適な培養条件で培養した菌体からニトリル前駆体アナログ分解酵素を単離精製し諸性質を解明するとともに、本酵素遺伝子のクローニングを行う予定である。 既存のC-N結合切断酵素や、大量精製が可能となった新規C-N結合切断酵素については、引き続き、結晶化・X線構造解析によって3次元構造を解明する。立体構造から得られる情報等を基に、活性中心と予想されるアミノ酸残基に対して部位特異的変異法により変異酵素を作成し、活性測定等を行うことで活性アミノ酸残基を同定する。 さらに、炭素-窒素結合合成酵素が触媒する本来の反応とは、異なる反応についても詳細を明らかにする。
|