研究実績の概要 |
炭素-窒素結合分解・合成酵素群の中で、(他の酵素に関しては継続して研究を進めているが)現在、炭素-窒素結合合成酵素の新規触媒能の発見、二次代謝産物合成に関わる酵素による有用物質生産に関して得られている成果について以下に記載する。 炭素-窒素結合を合成するアルドキシムデヒドラターゼ(OxdA)は、本来の基質アルドキシムを脱水してニトリルを形成する反応を触媒する。OxdAを過酸化水素に作用させたところカタラーゼ活性を触媒することを見いだした。カタラーゼ活性は、(本来の活性を失う)変異酵素や、ヘム周辺のアミノ酸置換変異酵素でも検出でき、それぞれの酵素活性のキネティックパラメーターを決定した。次に、OxdAおよび2種の変異酵素を用いて、ペルオキシダーゼ活性を検討した結果、本活性の検出に成功し、それぞれの酵素活性のキネティックパラメーターを決定した。さらに、OxdAがペルオキシゲナーゼ活性を示すことも発見したが、興味深いことに、OxdA変異酵素の中の1種(H320D)はこれまでペルオキシゲナーゼの反応産物として報告のない構造をもつ化合物に変換する能力を有することを明らかにした。各種OxdAのペルオキシゲナーゼ活性についてもキネティックパラメーターを決定した。 枯草菌の鉄キレート剤の1種である Bacillibactinの生合成に関わる酵素の1つであるDhbE遺伝子をクローン化し、大腸菌に導入して大量発現系を構築後、DhbEを精製した。DhbEは2,3-Dihydrobenzoic acid (2,3-DHB)とDhbBを基質とするチオエステル結合形成反応を触媒するが、2,3-DHBとL-システインを基質として反応させたところ、アミド化合物を合成できることを明らかにした。さらに、本酵素反応の諸性質を決定するとともに、本反応利用して様々な芳香族系N-アシルL-システインを合成することに成功した。
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