研究課題
本研究は、聴覚神経細胞のアポトーシス促進因子Bakとカロリー制限時にアポトーシス抑制に働くSirt3に焦点を当て、老化・抗老化の分子機構の解明を第一の目的としている。このために、以下のような研究を実施した。(1)Sirt3を介した抗老化機構に関わる候補因子の推定:12月齢の野生型マウス、カロリー制限した野生型及びSirt3ノックアウトマウスについて取得したDNAマイクロアレイデータの比較解析を行い、カロリー制限によりSirt3を介して転写レベルが増加もしくは低下する遺伝子を各30種類同定した。これらはSirt3の下流でカロリー制限時に機能する候補遺伝子群である。(2)老化調節因子の相互作用ネットワークの解析:脱アセチル化抗体を用いたプロテオーム解析を進め、いくつかの因子のアセチル化レベルが、カロリー制限を模倣した処理により変動することを検出した。これら因子の同定によりSirt3のすぐ下流の経路の理解につながるものと期待される。一方、他の組織についても検討を進め、加齢マウスにおいて、免疫組織の支持細胞におけるIL-6の産生が亢進していることが明らかになった。また、加齢マウスリンパ球において、腸管における免疫調節因子の一つであるレチノイン酸による、マイグレーションに関わる分子の発現誘導が弱いことが示唆された。第二の研究目的である老化調節因子を標的とした機能性食物質の探索を進めた。分子間相互作用システムを用いたBakの相互作用評価系(初年度に構築)を利用して相互作用解析を実施した。
3: やや遅れている
内耳組織におけるBakを中心としたミトコンドリア局在アポトーシス関連因子の解析、Sirt3及びBak等の老化調節因子と相互作用する食物質の探索・同定が十分に達成されていないことが主な理由として挙げられる。
マイクロアレイデータの比較解析により見出された遺伝子に注目し、Sirt3を介した老化調節機構で特に重要な寄与を示す遺伝子の絞り込みを進める。また、カロリー制限によりSirt3を介してアセチル化レベルが変動する因子の同定を推進する。Sirt3は短期絶食によってもカロリー制限と同様に発現レベルが上昇することが認められている。このため、内耳組織における短期絶食の効果を評価し、試料となるマウス内耳組織の供給、マウスの飼育コスト及び飼育期間の問題の改善を図る。食物質探索においては、in silicoスクリーニングの結果を活用して候補食物質を精査し、相互作用スクリーニングの効率化を図る。また、天然化合物ライブラリーの利用も引き続き検討する。
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