研究課題
Sirt3を介したカロリー制限応答遺伝子の解析:野生型(WT)マウス、Sirt3ノックアウト(KO)マウスの内耳組織のDNAマイクロアレイデータの比較解析により見出された遺伝子を詳細に検討し、リソソーム構成因子によるリソソームを介した細胞メンテナンス機能の活性化、神経伝達系プロトカドヘリンによる聴覚神経伝達の効率化、金属イオン輸送体によるミトコンドリア抗酸化機能の調節が、カロリー制限時にSirt3を介して制御される可能性が示唆された。老化調節因子の相互作用ネットワーク解析:①カロリー制限マウスの内耳組織のタンパク質発現の変動をLC-MS/MSにより定量比較し、TCAサイクル及び脂肪酸代謝関連酵素群の発現が増加し代謝サイクルが活性化していることが確認された。②内耳組織の主要な老化調節因子と相互作用する因子を解析するために、Sirt3およびBak関連アポトーシス制御因子の調製条件を確立した。③ストローマ細胞による炎症性サイトカイン産生が加齢による炎症亢進に関わる可能性が示された。また、加齢に伴いレチノイン酸(RA)産生やRAに対する反応性が低下し、ケモカインレセプターCCR9の発現が低下することが、腸管免疫においてマイグレーション能が低下する一つの原因となることが示唆された。Sirt3及びBak等の老化調節因子を標的とした食物質の探索及び複合体構造解析:①Bak及び老化関連疾患の標的ヘパトカインと食物質との相互作用スクリーニングにより、標的ヘパトカインに特異的に結合するペプチドを同定した。さらに、標的ヘパトカインの立体構造を決定し、NMRを用いて結合性ペプチドの相互作用部位を解析した。②抗老化食物質のスクリーニングのために、Sirt3及びその標的因子Idh2の活性を指標としたアッセイ系を構築した。③3種の食品が加齢により促進された炎症の軽減に効果を示すことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初研究目標の「Sirt3及びBakが関与するミトコンドリアを介した老化調節機構の解明」に関しては、①DNAマイクロアレイデータ等に基づいて注目すべき老化調節因子の同定に至っていること、②プロテオーム解析の実験条件を確立したことにより、タンパク質発現を指標として老化調節候補因子の同定が加速すること、③Sirt3 KOマウス等の内耳組織を取得し上記の解析を実施する状況が整っていることから、今後の解析を推進することで予定通りの成果が見込まれる。さらに免疫老化に関しても、ミトコンドリア機能の障害と免疫老化との関係を示唆する結果を得ており、順調に研究が進展している。「抗老化(加齢性疾患の抑制)機能をもつ食物質の同定と作用機序の解明」に関しては、当初目標のSirt3及びBakに加えて、Idh2や老化関連疾患の標的ヘパトカイン等の老化調節因子を標的とした、食物質との相互作用解析系及び活性評価系を構築したことにより、食物質のスクリーニングが加速すると期待される。また、抗老化(加齢性疾患の抑制)機能をもつ食物質と複数の食品シーズを見出しており、既に一定の成果が得られている。一方、老化調節因子の一部については、抗老化食物質の作用機序解明の基盤となる構造決定に成功しており、NMRを用いて老化関連疾患の標的ヘパトカインに対する結合性ペプチドの相互作用部位等の解析にも至っている。このため、今後のさらなる解析により、食物質の作用機序についても予定通りの成果が見込まれる。
今後も当初の研究目標に向けて、①ミトコンドリア機能を介した老化調節機構の解析、②抗老化食物質の探索と評価、③老化調節因子の構造解析と食物質の作用機序の解析を柱として、これまでの成果を基盤とした研究を推進する。①マウスの内耳組織を用いて、カロリー制限時にSirt3を介して発現変動する因子が関わる細胞プロセスの解析を進める。動物細胞を用いて、各因子の過剰発現・ノックダウンによる影響も評価する。また、LC-MS/MSによるタンパク質発現と翻訳後修飾の変動を指標に、老化調節因子の解析を進める。一方、免疫老化については、ミトコンドリア機能障害との関与を評価し機構の解析を行う。②老化調節因子を標的とする食物質の探索については、前年度に引き続き天然化合物バンクの化合物アレイ等の利用を検討し、Sirt3等の老化調節因子に相互作用する低分子化合物の探索を行い、構造類似性をもつ食物質についてその結合性を評価する方策で推進する。また、動物細胞を用いて取得した候補化合物の効果を迅速に解析する。一方、免疫老化に効果を示す食品抽出物については、さらなる炎症抑制効果を高齢マウスで明らかにするとともに、その機能性成分の解析を進める。③老化調節因子の構造解析を引き続き行い、同定した食物質の作用機序の解明に取り組む。
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