研究課題
本研究は、脳内における神経細胞の増殖、分化、細胞死等の制御に関わるプログラニュリン(PGRN)等の成長因子の生理作用に関する基礎的研究と、その遺伝子変異による神経変性疾患等の発現に関する病理学的な研究を融合させ、神経細胞の生存と変性を制御する成長因子の作用機構を解明することを目的としている。我々の研究によりPGRNは活性化ミクログリアで産生されてリソソームの過剰な生合成を抑制して神経炎症を抑制することが示唆されたため、今年度は特にリソソームの機能制御におけるPGRNの役割に着目した検討を行なった。その結果、PGRNはソルチリンやマンノース6リン酸受容体によりリソソームへ運搬され、リソソームの酸性化を促進することが明らかとなった。また、リポ多糖投与による感染ストレスモデルを用いて、リポ多糖により海馬におけるPGRNの発現が上昇し、神経新生を維持することが示された。一方、PGRNの低下によるTDP-43の異常蓄積が前頭側頭葉変性症や筋萎縮性側索硬化症の発症や病態進行と密接に関わっていることが示されているが、TDP-43はリン酸化以外の翻訳後修飾として複数のアスパラギンおよびグルタミン残基が脱アミドを受けていること、複数のメチオニン残基が酸化されていること、さらにいくつかのリジン残基がユビキチン化、アセチル化を受けていることを同定した。また、神経細胞における酸化ストレス増大およびグルコース枯渇はPGRNの遺伝子発現上昇を引き起こすことが見出されたためその分子機序解明を行った結果、両ストレスともにp38 MAPKの活性化を介してPGRN発現を調節していることが明らかとなった。脳虚血などによって生じる神経細胞のグルコース枯渇は、神経細胞におけるPGRN遺伝子発現を正に調節するとともにソルチリン量を負に制御することで、総合的に脳内PGRN量を増加させる機構を稼働することが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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