研究課題
【ショウジョウバエ外感覚器前駆体細胞運命の揺らぎ】これまでの生体イメージング解析からショウジョウバエ外感覚器のパターン形成において、外感覚器前駆体細胞(SOP)運命はNotchによる細胞死誘導によって、異常な分化細胞を除去することで発生のノイズをキャンセルすることが明らかになった。次にこの発生過程における環境要因が及ぼす影響について検討を行った。胚環境ストレスとして知られる温度変化を施し、成虫における外感覚器のパターンを定量した結果、ショウジョウバエの生育可能条件である15℃から29℃において、外的温度環境は外感覚器のパターン形成に異常は検出されなかった。どのような要因で分化異常細胞が生じるのかさらに原因を検討している。【マウス神経発生における細胞死シグナルの動態解析】アポトーシスは、ANRと呼ばれる脳のシグナリングセンターの領域調節を介して、脳の発生プロセスを時間枠内で正常に進行させる役割があることが明らかになった。現在、カスパーゼ活性化が発生頑強性を保証する機構を詳細に調べるためのシステムとして、カスパーゼ阻害因子p35をCre-loxP依存的に発現するLNL-p35Vマウスと、apaf-1条件的ノックアウトマウス(佐賀大学・吉田先生との共同研究)を作成、導入したところである。
2: おおむね順調に進展している
ショウジョウバエ外感覚器発生過程ではアポトーシスが発生で生じる分化エラーを消去することで頑強なパターンで外感覚器の形成がなされることが明らかになり、細胞死の発生の安定性に関わる生理機能が示された。このプロセスは温度変化などの環境の変化に対しては極めて安定であった。マウス発生過程ではシグナリングセンターと呼ばれる形成中の組織において、司令塔としての役割を果たす特定の細胞集団がある。この司令塔細胞は、FGF8やShhなど指令となるタンパク質を放出し、周りのたくさんの細胞の増殖や分化に影響を与える。こうした体作りのための指令は時々刻々と変化していくが、アポトーシスは不要となった司令塔細胞数の調節とその消去を行なうことで、正確な時期に速やかにシグナルの変換を可能にする働きがあることが明らかになった。このように、安定した発生進行に細胞死が積極的に機能していることがショウジョウバエとマウスを用いた研究によって明らかにされた。今まで、捉えることが困難であったため細胞死の生体機能があまり注目さてこなかったが、今回の研究によって細胞死の新たな生体機能が浮かび上がってきた。
ショウジョウバエ小盾板ではカスパーゼの非細胞死誘導活性によってSOPの出現頻度が調節される。カスパーゼは細胞のおかれた体内環境のストレスによって活性化の程度が異なると考えられる。カスパーゼ活性化変異体では体液のメチル化指数に変化があることが判って来た。そこで、SOPが作られる場においてもメチル化を介したエピジェネティックな制御があると考え、新たなスクリーニングを開始した。H3K9メチル化をになう酵素遺伝子のノックダウンはSOPの出現頻度を増加させることから、その作用を詳しく解析している。独自に開発したカスパーゼ活性化可視化プローブSCAT3を全身で発現するSCAT3トランスジェニックマウスを新規に作成し、神経管閉鎖過程におけるカスパーゼ活性化動態とそれに伴うアポトーシスを可視化することに世成功した。挙動の異なる二種類のアポトーシス細胞が異なる領域に存在しており、現在役割の違いがあるかについて検討を加えている。
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