研究概要 |
NKT細胞標的治療が先進医療Bに承認され、人工NKT細胞の実用化が期待されている。本研究では、NKT駆細胞系列決定機序を解明し、任意の機能を持つNKT細胞分化の誘導を可能にすることを目的とした。 NKT細胞は、胸腺DP段階でCD1d選択後、3種類のNKT細胞:Th2型、Th17型,Th1型に分化するとされていたが、それ以前のDN段階にNKT前駆細胞を見いだした。本年度、NKT前駆細胞の1)濃縮精製法確立:100%純度で前駆細胞を得るために、NKT細胞を除いたDN分画を単細胞分離後、唯一マーカーVa14遺伝子発現を指標に前駆細胞を選別し、一細胞RT-qPCR解析により、特異的表面分子(CD117-, CD24-, CD5+, CD27+, Slamf6-, CD39+, Cxcr3+, Cd163l1など)を同定。抗体を用いて、存在率80%程度まで濃縮できた。2)特異的転写因子同定:濃縮分画を用いてRNAseq法で、濃縮分画に発現する転写因子を14個抽出。さらに、100%純度の前駆細胞100個を集めたサンプルを用いてRT-qPCRを行い、特異的転写因子10個同定。3)2種類の前駆細胞発見:転写因子発現パターンからCD39+/-2種類の前駆細胞を発見。4)分化・機能に関わる転写因子:同定した転写因子はLIM、フォークヘッド、TFA,PAR, HOX, RTR, runtドメインを持つものなど数種類に分類でき、shRNAを用いた解析から、NKT細胞分化を抑制するもの、サイトカイン産生(機能)を抑制するものに分類できた。5)全発現データの多変量解析により、2つの前駆細胞は共にNKT細胞の90%を占めるTh1型系列に分化することが示唆され、培養実験結果もこれを支持したことから、CD39-細胞は系列決定直後の細胞で、CD39+細胞に移行後Th1NKT細胞へ最終分化するものと思われた。
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