研究課題/領域番号 |
23229007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 一彦 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80191394)
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研究分担者 |
岡村 僚久 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10528996)
澁谷 美穂子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20366363)
住友 秀次 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20392996)
庄田 宏文 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20529036)
岩崎 由希子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30592935)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム / 内科 / 免疫学 / 細胞・組織 / 生体分子 |
研究実績の概要 |
関節リウマチ(RA)患者の末梢血のリンパ球をマルチカラーフローサイトメーターで解析し,血清サイトカインや臨床パラメータとの関連を検討した。通常のTh1, Th17, Tregの割合は疾患活動性との関連はほぼ示さず、血清サイトカインではIL-6が疾患活動性との弱い関連を示したものの、血清サイトカインの多くは疾患活動性との関連を示さず、リウマトイド因子との関連を示した。その一方で、免疫細胞の関節への遊走に重要とされるCXCR4を発現するメモリーT細胞の割合は、抗シトルリン化蛋白抗体の力価、疾患活動性や健康評価と相関を示した。またRAのCD4陽性T細胞の自己抗原BiPに対する反応性がRAの疾患活動性と関連することを明らかとした。RAの疾患活動性と関連のあるT細胞集団の同定に成功したことの意義は大きく、今後のRAの病態の解明に向けてさらに発現遺伝子や遺伝子多型との関連の検討を進める。既にゲノムの国際共同研究などでRAとの関連を明らかとしたPADI4についてはノックアウトマウスの解析を進め、PADI4がIL-6産生に重要であることを明らかとした。IL-6はRAにおいて非常に重要であり、その産生メカニズムとシトルリン化の関連がみられたことは重要な知見と言える。またヒトLAG3陽性Tregについては、これまでにマウスLAG3陽性Tregと類似した遺伝子発現プロファイルを示し、抗体産生を抑制することを明らかとしていたが、さらにヒトLAG3陽性TregがSLEや活動性RAで減少していることを示した(Okamura et al. Nat Commun 6:6329,2015)。LAG3TregはB細胞機能抑制にTGF-beta3を用いることを明らかとし、自己抗体産生機構の解明は有効な治療戦略の開発につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RAのマルチカラー解析を行い、今後の解析の対象となるRAの病態に関連するポピュレーションを複数同定することができた。さらにLAG3Tregの機能を明らかとする解析も着実に進行している。またRAの感受性遺伝子が重要なサイトカインの産生に寄与することを明らかとし、感受性遺伝子解析の妥当性が検証できた。これらの進行により、RAの病態をゲノム、適応免疫を担うリンパ球サブセット、免疫応答を抑制するリンパ球サブセットという異なる観点から統合的に解明する基盤が構築されつつあると言える。したがっておおむね順調と考えらえる。
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今後の研究の推進方策 |
RA患者のリンパ球のマルチカラー解析に加え遺伝子発現解析を行い、遺伝子発現に影響する遺伝子多型すなわちeQTLの解析を行う。またゲノムワイド解析で同定された感受性遺伝子の機能を、遺伝子改変マウスなどを用いて詳細に解析してゆく。具体的にはPADI4, FCRL3に加えてCD244の機能の解析を進める。関節炎と関連の強いメモリーT細胞サブセットとしてCXCR4陽性細胞を同定しており、このサブセットを分化誘導するシグナルをリンパ球のNGSによる発現遺伝子解析で検討する。ヒトLAG3TregがB細胞を抑制する責任分子として同定されたTGF-beta3を軸として、RAにおける免疫寛容破綻のメカニズムにアプローチする。
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