研究課題/領域番号 |
23229009
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 壽一 京都大学, 医学研究科, 教授 (90176339)
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研究分担者 |
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 講師 (50335270)
山本 典生 京都大学, 医学研究科, 助教 (70378644)
坂本 達則 京都大学, 医学研究科, 助教 (60425626)
平海 晴一 京都大学, 医学研究科, 助教 (10374167)
北尻 真一郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (00532970)
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キーワード | 内耳発生 / 内耳再生 / 幹細胞 / 遺伝子 |
研究概要 |
先天性高度感音難聴に対する遺伝子検査については、本年度、次世代シークエンサーやエクソンキャプチャー、GWAS(genome wide association study)のための準備を京都大学医学研究科内のファーマコゲノミクス教室と共同で行った。また、人工内耳手術を受けた患者のうち、数家族について、外来にて本研究の説明を行い、採血の同意を得て、現在2名分のサンプルを入手した。採血の同意を得ている患者は、みな内耳に奇形を呈している患者で、健常な聴力を持つ患者の家族とのゲノムの比較を行い、その原因遺伝子を探ることにより、内耳の発生過程を明らかにできるものと考えている。 内耳の発生メカニズム解明のためのもうひとつの実験である、発生内耳の単一細胞を用いた網羅的遺伝子解析については、まずは、生後マウス蝸牛から単一細胞を採取してRNAを抽出、増幅を試みたが、充分な量を得ることができなかった。そこで、胎生の組織細胞の方が、生後のものよりも細胞辺りに含有するRNAの量がはるかに多いと考えて、対象となる蝸牛の日齢を変更した。胎生12日のマウスの蝸牛から、薬剤処理によって上皮を取り出し、そこから単一細胞を拾い出して、RNA抽出、増幅を試みている。 これらの実験手法の確立を待つ間、すでに、他の臓器での発生に重要であるとされるNotchシグナルやその下流分子の内耳発生における役割をノックアウトマウスを用いて先行して解析し、Notchシグナルのキー分子であるRbpj(Yamam Gto et al., Dev Biol 2011)や、Notchの下流分子であるHes,Hey(Tateya et al., Dev Biol 2011)が内耳発生に重要な役割を果たしていることを解明した。 また、ips細胞の内耳構成細胞への誘導を行ったものを、生後マウスの蝸牛に導入すると、神経細胞に誘導されれていることを明らかにし、iPS細胞の内耳再生への応用の端緒となる知見を得た(Nishimura et al. Cell Transplant 2012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先天性高度感音難聴に対する遺伝子検査の準備は順調に進んでいる。サンプルも収集のめどが立っている。また、単一細胞を用いた網羅的遺伝子解析は、手技の確立にやや手間取ってはいるが、他の臓器で発生に重要な遺伝子にについて先行して解析を行って、結果をえており、その点では、次年度以降のプロジェクトを今年度に有る程度行っている形になっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに遺伝子解析に必要なサンプルを集めて、有る程度の数が収集できた時点で解析を開始する予定である。また、単一細胞の網羅的遺伝子解析についても早期に技術的問題点を解決して、実験を進める予定である。また、これと平行して、他臓器で発生に重要な役割を果たす遺伝子の機能解析も、今年度行ったNotchに関して遺伝子以外のものについて行っていく。ips、ES細胞から内耳組織を効率よく誘導する手法についても、内耳発生に重要な遺伝子が同定される前でも、さまざまな遺伝子の操作を行うことによって開発を進めていく。
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