研究課題/領域番号 |
23240001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今井 浩 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (80183010)
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研究分担者 |
山下 茂 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (30362833)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 量子計算理論 / 量子グラフ理論 / 量子コンピュータ / 計算量理論 / 量子グラフマイナー理論 / 格子グラフ |
研究実績の概要 |
これまでに得られた成果をさらに発展させ、次のように役割分担して研究を推進した。 (a) 量子周期グラフ理論の確立(今井・山下・Le Gall):周期的な規則性を有するグラフ構造である周期グラフ等に着目し、このクラスのグラフでの点マイナーについて詳細に調べた。さらに周期グラフの表現・分解理論を構築した。これによって自然が有する規則性を反映しているともいえるこれらグラフの量子計算モデルにおける役割を明確にした。これらの新展開を論文にまとめて発表を行った。 (b) 多証明者量子対話証明による計算量(今井・松本・Le Gall・河村):量子多証明者対話証明における量子グラフ問題と量子力学諸問題の関係を調べて、量子グラフゲームを軸に多証明者量子対話証明による分類の精緻化を行った。さらに量子計算量理論分野において非決定性計算量に関する成果をあげ、論文発表した。また、これらの研究成果を土台として、行列乗算に関する量子・古典アルゴリズム研究において新展開をもたらすきっかけを得た。 (c) 複数量子計算モデルでの離散数理および物理実現からの研究(今井・松本・村尾・山下):物理実現に基づき、数理的に能力差の有無を示すことができる複数の量子計算モデルを対象として、それぞれの有するグラフの離散構造の解析を行うとともに、物理実現に絡んだモデル間の変換方式を理論的に解析した。 (d) 計算解析と大規模データ表現を通した量子計算研究(今井・山下):量子計算モデルの離散・量子構造の解析のために必要となる計算環境を整え、回路設計・解析において実績がある分担者の山下とともに、アクセラレータ付大メモリのコンピュータを導入し、グラフ解析での列挙の高速化を図り計算解析を行った。これによって、BDDを用いた量子状態表現へとつながる成果を上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
測定ベース量子計算と物理モデルとの研究を通して、周期グラフの能力解明を行った結果をジャーナル論文として発表することができ、またグラフマイナー理論との新たな関係を見出すことができた。研究分担者・連携研究者もそれぞれ研究に新しい展開をもたらしている。その1つに、計算結果の解析を進める中で研究計画当初は想定していなかった量子計算のBDD大規模メモリ処理という新たな知見を得たことがあげられる。研究遂行上、この量子計算のBDD大規模メモリ処理を見極めることが重要であることから研究方式を見直し、追加実験を行い、あらためて計算結果を解析するところまで進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究最終年度にあたることから、これまでにあげた研究成果を総括するとともに大きく発展させ、量子計算能力の限界解明を目指す。また、論文誌投稿や国内外の学会での発表などを通して研究成果の周知活動にも積極的に取り組んでいく。
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