研究課題/領域番号 |
23240009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東野 輝夫 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (80173144)
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研究分担者 |
山口 弘 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (80314409)
梅津 高朗 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 助教 (10346174)
廣森 聡仁 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 助教 (90506544)
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キーワード | 無線通信 / ユビキタスネットワーク / エミュレーション / ユビキタスサービス |
研究概要 |
本研究では、都市環境における人や車の行動モデルを構築し、その下で評価用テストベッドを迅速且つ低コストで実現するための技術を開発すると共に、テストベッドでの電波干渉状況などを自動的に記録・収集するシステムを開発する。本年度は、評価用テストベッドの土台となるHuman Mobility Sensing Simulator (HumanS)を開発した。HumanSは、人や環境などのセンシング対象、センシングを行うセンサ、センシング結果を収集するネットワーク、センシング結果の分析結果に基づく機器制御を同時にシミュレーション可能な評価環境で、これらが相互に与える影響を総合的に評価することができる。具体的には、センシング対象が生成する元々のデータと、センサにより把握できたデータ、通信により損失したデータまた遅延が生じたデータとの差分を導出可能で、最終的に収集できたデータが機器制御のための分析にどの程度活用できたか評価することができる。このHumanSを利用し、空調及び照明機器の省エネルギー制御システムを対象に、利用するセンサ及び配置の違いによる消費電力への影響を定量的に評価できることを示した。また,大規模なネットワークを対象としたシミュレーションを高速に実行するため、MAC層におけるパケット送受信の成否を確率に基づき決定する確率事象駆動型モデルを考案した。このモデルでは、あらかじめノード周辺のトラフィックを確率分布としてモデル化し、その確率分布に基づきパケット送信やパケット受信の成否を決定する。また、提案モデルと従来の離散事象駆動型モデルは、ノード単位で切り替えることが可能で、評価対象領域には詳細な離散事象駆動型モデルを使用し、残りの領域には提案モデルを使用するなど、評価目的やシミュレーションに使用する計算機資源に応じ、柔軟なシミュレーションを行うことができる。評価実験を行い、MAC層に関わるシミュレーション処理負荷を1/10に削減し、パケット送受信に要する処理を高速に実行できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、我々の研究グループで開発しているMobiRealを基に、モビリティと無線ネットワークに加え、実世界を扱うセンシング及び機器制御を対象としたシミュレーション環境としてHumanSを開発した。本研究では、実空間・サイバー空間の双方を扱うシミュレーション基盤として、HumanSを利用し研究を推進していくもので、当初の計画通り研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、実際のシステムを対象とした性能評価を行うために、多様なセンサを扱えるようHumanSの機能拡張を検討している。それだけでなく、現実的な人や車両の移動を再現できるよう、実世界における移動特性を定性的に再現可能なモビリティモデルを考案し、システムの性能に影響を与える移動特性を明らかにする。また、開発したHumanSを利用し、ITSシステムなど、道路に配置されたセンサや車両に搭載されたGPSなど多数のセンサが連携するシステムを対象とした性能評価実験を行い、提案する評価環境の有用性を示す。
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