研究概要 |
今年度は実験システムの開発,健常者向けの実験,および非健常者向けのパイロット実験を行った. 実験システム開発として,運動学習・支援データベース部の開発を進めた.将来の二次利用公開も見越してリレーショナルデータベースを用いて構築中である.データサンプルをできる限り多くするためには,実験室以外での計測も可能にすることが望まれる.そこで,Microsoft Kinectを用いた安価で簡便なモーションキャプチャ装置の開発にも取り組んでいる. 健常者向けの実験としては,ダーッ投擲運動を支援対象とした.個人適応的な支援をモデルベース型強化学習で実現するために必要な予測モデルを構築するため,まずは様々なタイプ・スキルレベルの被験者を集め,投擲モーションの計測を行った.現在計測データを定量化し,データベースを構築する準備を進めている.また,計測されたレベルの異なる被験者の投擲モーションを解析した結果,スコアの高い被験者ほど肘のインタラクショントルクをより多く利用して投擲を行っていることが分かった.この知見を次年度には,学習者の状態同定,提示する支援方法としても用いる予定である. 非健常者については,脳卒中患者の歩行リハビリテーションを支援対象とした研究を進める予定であったが,歩行リハビリテーションに使用する予定であった,国立障害者リハビリセンター所有の歩行リハビリテーション用商用ロボットLocomatが故障したため,実験を行うことができなかった.そこで代替案として,研究代表者所属機関が所有する歩行装置つき没入型3面ディスプレイを活用する準備を行っているまた,分担者の和田をはじめとする奈良県立医科大学医師の協力を得て,平衡障害患者やパーキンソン病患者も支援対象に加え,平衡系のリハビリトレーニング前・後のモーション計測のパイロット実験も行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた非健常者の学習時のデータを計測する段階まで至っておらず,やや遅れが生じている.理由として,歩行リハビリテーションに使用する予定であった,国立障害者リハビリセンター所有の歩行リハビリテーション用商用ロボットLocomatが故障したため,実験を行うことができなかったことが挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
健常者向けのダーツ支援については,個人適応的な支援をモデルベース型強化学習で実現するために必要な予測モデルを構築する.そして,モデルベース型強化学習による支援と,モデルフリー強化学習による支援との性能差を比較する.非健常者向けの支援については,比較的研究推進が容易であると考えられる平衡障害患者を対象とした計測と支援の研究を推進しつつ,脳卒中患者やパーキンソン患者を対象とした計測・支援研究の検討も進める.
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