本年度は,甘味及び辛味センサの開発と味覚・嗅覚・視覚の3つの感覚を融合したバイオセンサシステムの検討を進めた. 甘味センサの受容メカニズムにおいては,これまでの知見では,ベンゼン環を有する化学物質を脂質高分子膜に含有することが必要であったが,ベンゼン環を含まない脂質を含有した脂質高分子膜においても,甘味物質であるスクロースに応答する事が新たに明らかとなった.また,サッカリンNaやアセスルファムK等の人工甘味料を対象とした負電荷高感度甘味料用の甘味センサの開発に成功した.辛味センサの開発では,表面プラズモン共鳴(SPR)免疫センサを用いた間接競合法により,辛味物質のカプサイシノイドの検出に成功した(検出限界数10 ppbレベル). 味覚・嗅覚・視覚の3つの感覚を融合したバイオセンサシステムの検討においては,トマトを対象とし,味覚,嗅覚,視覚に準ずる味覚センサ,ガスクロマトグラフ質量分析 (GC-MS),測色 (L*a*b*表色系色)による測定と「おいしさ」を項目とした官能検査(被検者20名)を実施し,重回帰分析によるモデルの構築を行った.官能値を目的変数とし,センサパラメータを説明変数とした重回帰分析を実施した結果,酸味,うま味,a*の寄与が高いことが分かった.従って,味覚・嗅覚・視覚のセンサ情報を融合した「おいしさ」評価の実現性が示唆された.
|