研究課題/領域番号 |
23240044
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
吉川 研一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80110823)
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研究分担者 |
元池 育子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (70347178)
湊元 幹太 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80362359)
市川 正敏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (40403919)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モデル細胞 / ゲノムDNA / DNAの高次構造相転移 / チューリングモデル / 遺伝子のスイッチング / 時空間秩序 / リン脂質小胞 / 空間離散場 |
研究概要 |
生命現象の動作原理を解明するため、分子・細胞・細胞集団の階層ごとの理論研究と、それと対照可能な実空間での人工モデル系構築による実験研究の両方を実施することを目標として研究を展開してきた。課題目標:1)ゲノムDNAの高次構造相転移と遺伝情報の自律的制御、2)実空間上のモデル細胞構築による細胞の動的機能の理解、3)多細胞系における時空間秩序の自己形成機構の解明(非Turingモデルの検証)、について、いずれも、当初の予定を上廻る成果が得られてきている。なかでも今年度は、細胞サイズ空間内では、遺伝子発現が一桁以上加速する効果があることを見出しており、子の新規性は高いと思われる。具体的には、ウサギ網状赤血球ライセートを使い、GFPの遺伝子を組み込んだプラスミドを用い、転写・翻訳により、GFPを発現させた。50時間にわたって、GFPの濃度変化を連続的に測定したところ、濃度が時間に比例して増大することがわかった。これは、反応の次数が0次であることを意味している。このようにして求めた、反応速度定数を、液滴のサイズ(半径R)に対してプロットすると直線関係が得られた。反応物の体積に対して、液滴の表面積は、1/Rに比例して変化することを考慮すると、転写・翻訳の一連の反応が膜表面上で高速度で進行していることを表している。細胞サイズ空間では、膜表面が関与して、タンパク質発現が高効率で進行しているとの今回の発見は、細胞機能の本質を理解するうえで重要であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全体として、当初の予定を上回る成果が得られてきている 1)ゲノムDNAの高次構造相転移と遺伝情報の自律的制御:上記の成果の概要でも述べたように、リン脂質界面上で転写・発現活性の著しい昂進が起こっていることを明らかにした。これは、細胞の機能を考えるときに、基本的に重要な事項であり、その学問的な意義は大きい。 2)実空間上のモデル細胞構築による細胞の動的機能の理解:細胞サイズの油中水滴から、水層ないでのリン脂質小胞を作成する方法論を、ほぼ確立することが出来た。今後の成果が大いに期待される。 3)多細胞系における時空間秩序の自己形成機構の解明(非Turingモデルの検証):細胞間の力場の効果を取り入れた、形態形成モデルについての理論的研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね、当初の研究計画にのっとり、さらには、新たに発見した事項も加えて、総合的に研究を推進する予定である。 1)ゲノムDNAの高次構造相転移と遺伝情報の自律的制御:ゲノムサイズのDNAについて、chiralなポリアミンなどとの特異的な相互作用や、Pt系の抗がん剤の構造や機能に対する影響なども系統的に調べる。 2)実空間上のモデル細胞構築による細胞の動的機能の理解:細胞サイズ空間の特異性についての研究を一層推進するとともに、高濃度の蛋白を安定に内包した細胞サイズリン脂質小胞の構築を試みる。 3)多細胞系における時空間秩序の自己形成機構の解明(非Turingモデルの検証):発生時の原腸陥入や、歯や毛根の形成過程に関する数理物理モデルを推進し、実験結果と対比させて検討する。
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