研究課題/領域番号 |
23240046
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 憲作 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60008563)
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キーワード | 嗅覚 / 記憶の固定化 / 睡眠 |
研究概要 |
1.ラットにおける、食事に伴う嗅覚・味覚連合学習時の嗅皮質活動の記録 麻酔下の手術により、ラットの鼻腔内にサーミスタ呼吸モニターを装着し、前梨状皮質(嗅皮質)および嗅結節に多点金属微小電極を刺入装着した。これらのラットを用いて、自由行動下の行動状態を呼吸パターンによりモニターしながら、食事前後および食後の休息・睡眠時での前梨状皮質ニューロン群および嗅結節ニューロン群から長時間連続スパイク活動記録をおこなう方法を確立した。 また、匂いAを砂糖につけた「匂い-食事報酬連合学習」の行動実験アッセイ法および、匂いAのついた食事後の腹腔内LiCl注入による「匂い-食事嫌悪連合学習」の行動実験アッセイ法を確立した。 2.嗅皮質鋭波は、食後の睡眠時に顕著に発生し、嗅球へトップダウンに伝わり、新生顆粒細胞の生死決定に関与する。 食後の徐波睡眠時に特異的に、1)前梨状皮質を起源とする嗅皮質鋭波(OC-SPW)が発生すること、および2)嗅皮質鋭波に伴う前梨状皮質の錐体細胞の同期活動が、嗅球の顆粒細胞へとトップダウンに伝わることを見出した。また、新生顆粒細胞のアポトーシスによる嗅球神経回路からの除去が、食後の睡眠時に顕著に増大することを見出した。さらに、前梨状皮質へのムシモル注入により、嗅皮質鋭波の発生を抑制すると、食後睡眠時の顆粒細胞死の増加がなくなることより、前梨状皮質からのトップダウン信号が、食後睡眠時の新生顆粒細胞の除去に関与することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「無麻酔自由行動下での嗅皮質および嗅結節からの記録技術」や「嗅覚・味覚連合学習の実験パラダイム」が確立できたこと、および「嗅結節や無顆粒島皮質で、嗅皮質鋭波と同期したニューロン活動が食後睡眠中に記録でき始めた」ことより、計画どおり順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、食事に伴う嗅覚・味覚連合学習時に、嗅皮質ニューロン・嗅結節ニューロン・島皮質ニューロン、および前頭眼窩皮質ニューロンの活動パターンを記録し、連合学習による活動の変化を解析する。 また、嗅覚・味覚連合学習を伴う食事体験後の休息・睡眠時の嗅皮質ニューロン・嗅結節ニューロン・島皮質ニューロン・前頭眼窩皮質ニューロンの嗅皮質鋭波と同期した活動を記録・解析し、食後睡眠時の記憶固定化にともなう神経回路の再編を探る。
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