研究概要 |
遺伝子導入補助試薬を用いて細胞内に異常タンパク質の重合核を導入し、細胞内に異常蛋白質が蓄積するモデルを構築したが、試験管内で線維化したリコンビナントαシヌクレインやタウだけではなく、実際の患者脳由来の異常蛋白質がシードとしてはたらき、細胞内蛋白凝集を促進する効果があるかどうかを検討した。αシヌクレインの蓄積病変があるレビー小体型認知症,多系統萎縮書、あるいはタウの異常病変があるアルツハイマー病,皮質基底核変性症,進行性核上性麻痺,ピック病,FTDP-17の患者脳のサルコシル不溶性画分をαシヌクレイン、あるいはタウを発現する細胞に導入した。その結果、これらの患者脳試料も、細胞に発現するタウを蓄積させることが明らかとなった。 シード依存性蛋白蓄積を動物脳内で再現するため、マウスの脳に重合核となりうる線維化αシヌクレイン、またはその対照として可溶性αシヌクレインを導入する実験をおこなった。一定期間の後、解剖して脳内の病理変化を免疫組織染色により病変を観察した。その結果、線維化αシヌクレインを導入したマウスにおいて、正常では認められないリン酸化αシヌクレイン陽性の異常病変が観察された。一方、可溶性αシヌクレインを導入したマウスではそのような変化は見られなかった。この結果は多数例の同様の検討でも再現されたことから、動物脳内においても線維化シードが細胞内に取り込まれ、病変が広がることが強く示唆された。
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