研究課題/領域番号 |
23240053
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
柚崎 通介 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40365226)
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研究分担者 |
幸田 和久 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40334388)
掛川 渉 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70383718)
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キーワード | ニューロン / シナプス / 神経回路 / 小脳 / プルキンエ細胞 / グルタミン酸受容体 / LTD / 海馬 |
研究概要 |
記憶・学習の基礎過程として長期抑圧(LTD)が注目されている。神経活動亢進によって、シナプス後部におけるAMPA型グルタミン酸受容体が選択的にエンドサイトーシスされることがLTDの実体であると考えられている。しかしその分子機構についてはよく分かっていない点が多い。例えばデルタ2型グルタミン酸受容体(Glud)欠損マウスにおける小脳LTD障害の原因は全く説明できない。本研究では、LTD誘導時におけるGluD2による細胞内シグナリング経路を解明すること、およびシナプス後部におけるエンドサイトーシス実行分子の制御機構を解明するという2つのアプローチ法によりこの問題に挑み、小脳・海馬を含めた新しい統合的なLTDの分子機構モデルの確立を目指す。 本年度は、GluD2による細胞内伝達経路についての解明を進めた。GluD2は小脳プルキンエ細胞に特異的に発現し小脳運動学習とLTDの発現に必須である。GluD2のC末端に結合する分子がAMPA受容体エンドサイトーシスを引き起こす過程についてはかなり解明が進み、現在論文準備中である。一方、シナプス後部におけるエンドサイトーシス実行分子の制御機構についての解明も進んだ。海馬CA1領域において低頻度刺激によって引き起こされるNMDA受容体依存的LTDにおいては、カルシウムイオン流入により活性化されたCalcineurinがシナプス後部において脂質合成酵素PIP5Kを脱リン酸化し、アダプタータンパク質AP-2と結合することにより酵素活性が上昇して、脂質PI(4,5)P2を合成する。そのため、さまざまなエンドサイトーシス実行分子を局所的に集積させてAMPA受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスを引き起こすことが分かった(Neuron,2012)。同様の経路が小脳LTDによってどのように制御されるのかについてはさらに検討を加えていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目標の一つであった「シナプス後部におけるエンドサイトーシス実行分子の制御機構の解明」については、海馬CA1において、神経活動による脂質合成酵素の制御機構という全く新しい分子機構の解明に成功し、high impact journal(Neuron)に出版できたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、LTDのもととなるエンドサイトーシス実行分子の制御機構について解明を進め、とりわけGluD2がどの過程をどのように制御するのかを解明していきたい。
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