研究課題
筋小胞体分画より以前同定したミツグミン53 (MG53)は、細胞内小胞の運動に深く寄与しており、筋損傷時の膜修復機構における鍵分子として機能することが判明している。MG53は細胞外添加によっても膜修復機構を活性化することが判明し、心臓の虚血再潅流実験系にてMG53静脈注射により心筋細胞死の軽減が観察された。また、心筋・骨格筋ストレス時には血中MG53レベルが上昇することも判明した。従って、MG53は筋細胞死抑制薬として有用であるとともに、筋損傷マーカーとしても有用であると考えられる。これらの実験は研究代表者、米国オハイオ州立大と中国北京大の国際共同研究グループによる成果として発表された(発表論文1)。TRIM/RBCCファミリーに属すMG53は、胃に特異的に発現するTRIM50と高い構造上の相動性を示す。TRIM50欠損マウスは胃酸分泌障害を示し、その変異壁細胞においてはH+ポンプ含有小胞の動態異常を示す電子顕微鏡像が得られた。従って、MG53とTRIM50は細胞内小胞の動態制御に寄与する生理機能を共有することが明らかになった(発表論文1)。TRICチャネルに関する研究では、TRIC-A過剰発現血管平滑筋の生理機能変化を解析するとともに(論文投稿中)、平滑筋特異的TRIC-Bトランスジェニックマウスの作成を行った。また、ミツグミン23 (MG23)に関する研究では、MG23欠損マウス骨格筋の形態学的解析を進めて、その筋小胞体には高電子密度の貯留物が過剰に蓄積していることを電子顕微鏡により観察した(未発表データ)。
2: おおむね順調に進展している
本研究の解析標的であるミツグミン23とTRICチャネルに関して、論文発表に到る成果には達しなかったものの、H25年度には結実する重要な予備的成果が得られた。また、ミツグミン53に関する研究は予想以上に進展した。
平滑筋細胞の小胞体上には、Ca2+放出チャネルとしてリアノジン受容体とIP3受容体が共発現しており、TRIC-AとTRIC-Bも共存している。TRIC-A欠損平滑筋の解析にて、TRIC-Aとリアノジン受容体、TRIC-BとIP3受容体の選択的な機能共役の存在が推定された。この推論を検討するために、H24年度にはマウス実験モデルの作成に終始したが、H25年度には具体的な生理学的検討が予定されている。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Sci. Transl. Med.
巻: 4 ページ: 139ra85. 1-11
doi: 10.1126/scitranslmed.3003921
J. Biol. Chem.
巻: 287 ページ: 33523-33532
doi: 10.1074/jbc.M112.370551
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/biochem/