研究課題
TRIC-AとTRIC-Bは小胞体や核膜に分布し、一価陽イオン透過性チャネルを形成するため、細胞内環境では主にK+チャネルとして機能する。これまでの研究代表者らの成果から、TRICチャネルは小胞体Ca2+放出を促進するカウンターイオンチャネルとして生理的に機能することが推定される。TRIC-A欠損マウスは抵抗血管平滑筋における静止Ca2+濃度上昇により高血圧を示す。TRIC-A欠損血管平滑筋では、リアノジン受容体が仲介する小胞体Ca2+スパークの発生が障害され、細胞膜のCa2+依存性K+チャネルの開口が減弱して脱分極することで、電位依存性Ca2+チャネルの活性化により細胞内静止Ca2+レベルが上昇する。そこで、遺伝子欠損とは逆のモデル系となる平滑筋特異的なTRIC-A過剰発現TGマウスを作製し、その抵抗血管の生理的変化を検討した。このTGマウスは恒常的に低血圧を示し、その血管平滑筋においてはCa2+スパークの過剰発生、Ca2+依存性K+チャネルの活性化による過分極、電位依存性Ca2+チャネルの不活性化による細胞内Ca2+レベルの低下が観察された。一連の研究成果からは、血管平滑筋のTRIC-A発現量は静止緊張性を規定することで、血圧を設定すると結論されるとともに、TRIC-Aは難治性高血圧の治療薬標的として有用であることも推察される。一方、cDNA機能発現系の構築が困難であり、TRICチャネルの電気生理学的な理解は遅れており、特にTRIC-Bチャネルの詳細は不明であった。イギリスのグループとの共同研究により、TRIC-A欠損マウス由来の筋小胞体試料を活用することで、単一TRIC-Bチャネルの電流を人工脂質二重膜系にて計測することにも成功した。今後のチャネル計測における電位やCa2+依存性やイオン選択性、さらには不活性化機序のサブタイプ間での比較検討により、チャネル生物物理学的特徴が明らかになることが期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/biochem/