研究課題/領域番号 |
23240056
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福田 寛 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (30125645)
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研究分担者 |
瀧 靖之 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (10375115)
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キーワード | 脳画像 / 脳形態計測 / ネットワーク解析 / グラフ情報理論 / 脳加齢 |
研究概要 |
脳MRI画像を用いた、グラフ情報理論に基づく脳構造ネットワーク解析を行った。 現有する日本人脳MRI画像データベースから、若年群(20-40歳)、中年群(41-60歳)、老年群(61-80歳)各350例を選択した。脳局所を左右それぞれ45カ所に分割し、二つの対応する脳領域の脳灰白質容積の関係をプロットしてPearson相関係数を求め、相関マトリクスを作成した。一定の閾値以上を示す部位結合のみを選択し、binaryの脳領域間ネットワークマトリックスを作成、次いで、グラフ情報理論に基づくネットワーク構造解析を行い、脳の情報伝達の効率(Eloc,Eglob)、および包括的モジュール構造(modularity)などのネットワークパラメータを計算した。 Eloc,Eglobの値は加齢に伴ってUカーブ(Eloc)および逆Uカーブ(Eglob)のパターンを示した。この結果は、脳全体のバランスのとれたネットワークパターン(distributed)から、加齢によって、局所に限局したネットワークパターンに変化することを示唆する。また、modurality解析の結果、若年、中年、老年群は、それぞれ5,6,5つのmoduleに分割され、module間の情報伝達を通じて脳全体の情報のハブ機能を果たすinter-module connector(E)の数は若年、若年と中年でほぼ同様であるが、老年ではこれらの数が著しく減少することがわかった。このことは、老化によって脳のネットワーク機能が低下することを意味している。以上、グラフ理論を用いた脳構造ネットワーク解析を行い、ヒト脳の包括的ネットワーク構造の加齢に伴う変化を明らかにした。現在、子供の脳MRI画像を用いて、脳発達に伴うネットワーク構造の変化の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記述した研究計画(1)形態情報を用いる脳ネットワーク構造解析は完了し、その結果を国際学会で発表するとともに、論文化した。また、研究計画(2)の子供を対象とする機能的脳MRIから脳機能ネットワーク解析を行う研究については、データ収集は終了し、方法論の再検討が必要ではあるものの、全体として解析は順調に進行している。また、H23年度に計算機環境を大幅に整備・増強することにより、解析の試行錯誤にかける時間が短縮している
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今後の研究の推進方策 |
安静時の脳機能的MRIの信号のゆらぎからネットワークパターンを解析する方法は、脳のアイドリング状態の脳機能を明らかにする点で極めて有力な手段である。また、同一被験者の時系列データを用いることにより、一例でもネットワーク解析ができる利点がある。この方法論を用いて子供の脳の発達に伴うネットワークパターンの変化の解析を進めることにする。本解析では、データの前処理の方法が複数あり、どれが最も妥当であるか世界的に見ても合意が得られていない所が問題である。現在、異なった解析法による計算結果を比較してその特徴を比較しているところである。
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