研究課題/領域番号 |
23240056
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
福田 寛 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (30125645)
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研究分担者 |
瀧 靖之 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (10375115)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脳ネットワーク解析 / 脳MRI / グラフ理論 / 子供脳 / 脳発達 / 性差 |
研究概要 |
本年度は機能的MRIデータを用いて子供の脳ネットワーク機能の発達について検討した。機能的MRIは2秒ごと時系列160のデータを有している。その信号の時間変化が二つの脳領域間で相関するかどうか解析し、90x90の脳局所領域間で相関マトリックスを作成した。次いで数学グラフ理論を用いて、脳のネットワーク解析を行い、情報伝達の効率を示すパラメータであるクラスター効率 (C), 経路長 (L), 脳局所パラメータを計算した。この計算を行う前に、データの前処理の方法、脳領域の分割数を90x90にするかあるいは高分解能にするか、相関解析の有意閾値のレベルなど方法論的な検討を行って最適条件を決定した。 計算には6歳から18歳までの子供の機能的MRIデータを用いた。まず、全脳レベルでCとLのパラメータを用いて解析した所、子供の脳は大人と同様にsmass-worldnessの特性を有することがわかった。また、局所脳のパラメータであるnode degree, node efficiency, node betweenessの解析から21の脳領域がハブ(hub)機能を有すること、そのうち14カ所は三つのパラメータに共通なhubであることを示した。これらの多くは、連合野および傍辺縁系に属していた。年齢、性とネットワークパラメータとの相関解析を行ったところ、全脳レベルでは正規化したC, small-worldnessおよびlocal efficiencyが年齢と正の相関を示した。また、L、正規化したLおよびglobal efficiencyの三つのパラメータに性差が見られた。脳局所レベルでの検討では、前頭葉領域で加齢に伴う増加、後頭葉領域で加齢に伴う減少が見られた。また、いくつかの領域で性差が見られた。これらの結果は脳の発達に伴うネットワークパターンの成熟の理解に貢献すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、脳局所灰白質量を指標としてグラフ理論に基づく脳ネットワーク解析を行い、成人では若年、中年、老年でそれぞれネットワークパターンが異なり、情報伝達の効率や統合性の観点から、ヒト脳ネットワーク機能の成熟、老化の過程を明らかにした。平成24年度は、機能的MRIの時系列のデータを用いたネットワーク解析の手法について検討し、方法論を確立した上で、6歳から18歳までの子供の脳発達に伴うネットワークパターンの変化をあきらかにした。これらの成果は三つの論文として欧文一流誌に掲載されており、4報目も受理直前である。この分野は5年前に我が国では唯一申請者が取り組み始めた領域であり、業績を上げている研究分野である。研究開始・遂行の課程で幾多の困難があったが順調に進展していると言える。また、この研究を主として担当している理数系出身のポスドクは大きく成長しており、将来のこの分野を担う人材になると確信している。人材育成の面でも順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、計算に使用するMRI画像の種類をさらに広げ、脳灰白質量、脳血流変化(機能MRI)に加えて脳白質線維の方向性を示す拡散テンソル画像(DTI)を用いたネットワーク解析に挑戦する。方法論的には多くの問題を解決する必要があり、それらを解決した上で、現有の脳画像データベースを用いて解析を行う。DTIを加えることにより、脳灰白質量(神経細胞の量の情報)、安静時機能的MRI(脳機能情報)、DTI(白質線維の情報)から得られたネットワーク情報相互の類似性、異動を検討しヒト脳のネットワーク機能を統合する。これらの研究により、最終的には脳科学と情報科学の融合をめざす。
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