研究課題
1) 24年度の研究で我々は、思春期に上昇するテストステロンが、エストラジオールに変換され(芳香化)、内側扁桃体のエストロゲン受容体アルファを介して働くことが、成熟後の性特異的な性行動、攻撃行動の表出に不可欠であることを見出した。25年度にはその神経基盤の解明に向けて解析を進めたところ、思春期前に内側扁桃体においてのみ、エストロゲン受容体アルファの遺伝子発現をRNA干渉法により抑制すると、雄マウスの内側扁桃体の神経細胞数が減少することが明らかとなった。従って、芳香化されたテストステロンがエストロゲン受容体アルファに結合することが、内側扁桃体の性特異的な神経発達に重要であると結論された。2) エストロゲンによる社会行動制御に果たすエストロゲン受容体ベータの役割についての解析を進めた。なかでも、内側扁桃体のエストロゲン受容体ベータの遺伝子発現の抑制により、通常の雄マウスが非発情メスよりも発情メスに対して示す選好性が消失することが明らかとなった。従って、発情雌に関する嗅覚情報処理や、適切な相手への効率的な性行動の表出には、内側扁桃体のエストロゲン受容体ベータが関与していることが示唆された。3) 雌マウスの社会行動、特に性行動の制御に果たすエストロゲン受容体ベータの役割についても上記の1)、2)と同様な手法を用いて解析した。その結果、発情期でない時期での性的受容性の抑制に背側縫線核のエストロゲン受容体ベータの発現が不可欠であることが明らかとなった。その神経内分泌基盤について現在、さらに解析を進めている。4) エストロゲン受容体ベータを発現する細胞を赤色蛍光タンパク質にて標識するTgマウスの作製を進め、当該Tgマウスのファウンダーを得ることができた。現在、ファウンダーTg動物を掛け合わせ,ラインの絞り込み,およびキャラクタリゼーションを行っている。
2: おおむね順調に進展している
予定していた実験はほぼ順調に推進することができた。加えて、国内の研究 分担者との協力により、エストロゲンによる社会行動の制御の基盤となる神経組織学研究を推進し、原著論文および学会発表を精力的に行った。また、新たに研究分担者を加えて24年に着手したエストロゲン受容体ベータを標識したTgマウスと抗体の作製についても着実に進展しており、26年度中には行動解析や行動の神経内分泌基盤解析に使用できることが期待されている。
26年度にも引き続き、これまでに確立・改良した社会行動テストバッテリーを、脳内でのステロイドホルモン作用を操作したマウスに適用し、行動解析と 神経組織解析を平行して行うことにより、エストロゲンによる社会行動の制御にどのように関わっているかについて、明らかにしていく。1) 25年度までの研究の結果、思春期に急激に増加するテストステロンが、内側扁桃体のエストロゲン受容体 (ER)-a を介して、成熟期以降の性、攻撃などの社会行動の発現に対して形成作用を持つことが明らかとなっている。26年度 には、ER-a依存的に制御される脳内物質の同定を試みることにより、思春期テストステロンの形成作用の脳内機構の解明を目指す。2) 25年度の解析結果から、社会行動表出の基盤となる選好性には、内側扁桃体のER-bが関与していることが明らかとなった。26年度には、内側扁桃体に加えて、分界条床核に発現するERの役割についても、ERサブタ イプ(ER-a vs ER-b)の同定も含めて解析を進める。3) 25年度にエストロゲン受容体ベータを発現する細胞を赤色蛍光タンパク質にて標識するTgマウスの作製に着手し、当該Tgマウスのファウンダーを得ることができ、現在、ファウンダーTg動物を掛け合わせ,ラインの絞り込み,およびキャラクタリゼーションを行っている。26年度中には、このラインのマウスが、社会行動制御に果たすER-bの役割の解析に有効であるかどうかを検討する。4)エストロゲンがER-bを介して脳内オキシトシン系に働くことによって、社会的認知機能をコントロールしている可能性について、25年度に引き続き、オキシトシン関連遺伝子改変マウスを用いた海馬の神経新生の解析を進める(海外協力研究者との共同研究)。
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