研究課題/領域番号 |
23240061
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
百溪 英一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・病態研究領域, 上席研究員 (50355145)
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研究分担者 |
山本 静雄 麻布大学, 環境保健学部・衛生技術学科・免疫学研究室, 教授 (40130900)
栗林 尚志 麻布大学, 環境保健学部・衛生技術学科・免疫学研究室, 講師 (00386799)
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キーワード | 実験動物学 / クローン病 / ヨーネ菌 / 抗酸菌 / 食品衛生 |
研究概要 |
具体的内容:ヨーネ菌粗製Map-L抗原を皮下接種後に結腸内接種をする手法により、人のクローン病に酷似した腸炎を再現することを繰り返し確認した。また、既知のクローン病モデルとして知られるTNBS誘導結腸炎を作成して、両病変について準定量的病理学的解析を行った。1)実験期間中に対照およびヨーネ菌抗原1回接種以外の各群に被毛光沢が悪くなったマウスが数頭観察され、それらには強い結腸病変が観察された。2)無抗原群、一度接種群には病変は無く、ヨーネ菌抗原による腸炎は二次感作抗原の濃度を変えても同質であった。3)病変は壊死性腸炎であり、症例によっては全層に及び病変は全層性の壊死性腸炎でTNBS誘導腸炎に比べて、筋層の炎症が強くよりクローン病に類似した。4)TMBS誘導性の結腸炎はやはり壊死性腸炎であるが、特に筋層の炎症はMap-L抗原誘導性の結腸炎よりも軽度であった。5)病変は異型上皮、クリプト不整、潰瘍、糜爛、水腫、細胞浸潤(粘膜層、粘膜下織、筋層、漿膜)、穿孔などで、炎症細胞として、好中球、マクロファージ、リンパ球浸潤が認められた。ラットの実験系についてはサンプリング条件及び、急性相タンパク質の経時的検出実験の評価を行った。マウスの実験系で解析するパラメーター探索のために、人の炎症性腸疾患病変とヨーネ病の分子病理学的比較も行った。 成果の意義、重要性:従来、ヨーネ菌DNAは病変部から検出されたり、稀に菌分離がなされるのみで、因果関係の証明がなされていなかった。本実験結果はクローン病の病理発生機序に対して、初めて積極的な原因を提起した画期的なものである。ヨーネ菌死菌抗原の起病性が明らかになったことから、クローン病患者の発生を予防するため、同抗原の食品コンタミネーションの防止のために、(1)ヨーネ病の撲滅推進、(2)汚染輸入食品の検査、輸入禁止などの措置を検討する必要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の繰り返し試験により、ヨーネ菌の脂溶性抗原を皮下接種感作後1週間目に結腸に同様抗原を暴露することにより激烈な壊死性腸炎を起こすことが証明された。その病変の特徴や低度をスコア化して評価した成果をPLoSOneに投稿してreviceを要求されている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
比較病理学的解析:前年度に得られたヨーネ菌抗原の壊死性腸炎発現について、接種経路と、接種間隔を変更して病変の再現を試みる。得られた病変については病理組織学的、免疫組織学的に準定量解析を行い、投与経路、投与法による腸炎惹起の有無や程度の比較検討を行う。抽出法を変えたヨーネ菌抗原の病変形成性について評価を行う。 ラットの系についても同様に壊死性病変の再現試験を進める。 分子生物学的解析:得られた病変からRNAを抽出してマルチプルPCRシステムによる、自己免疫病関連および炎症関連鍵分子の発現を中心に定量PCRによる解析を実施する。 抗原の分画解析:ヨーネ菌脂溶性抗原の分画と性状の解析を進める。 研究上の問題点:特に問題はない。
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