研究課題/領域番号 |
23240061
|
研究機関 | 東都医療大学 |
研究代表者 |
百溪 英一 東都医療大学, ヒューマンケア学部, 教授 (50355145)
|
研究分担者 |
栗林 尚志 麻布大学, その他部局等, 講師 (00386799)
山本 静雄 麻布大学, その他部局等, 教授 (40130900)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 実験的腸炎 / クローン病 / 抗酸菌抗原 / 免疫病理学 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本年度はヨーネ菌脂溶性抗原による全層性腸炎の発現の再現性を確実なものとするため異なった研究教育機関においてindependentな実験を実施して評価を行った。東都医療大学において抗原を調整した。東京医科歯科大学人体病理学教室ではヨーネ菌脂溶性抗原、BCGの全菌体抗原ならびにPropionibacterium acnesの全菌体抗原を用いて、マウスに皮内感作を行い、その後7日目に腸注処理を実施して5日後に病理解剖を行い病理組織学的に検索を行った。病理組織学的観察においてヨーネ菌脂溶性抗原接種群においては腸粘膜固有層~下組織を中心に結腸の全層性腸炎が形成されていた。BCGの全菌体抗原接種群では粘膜固有層の炎症が観察されたが筋層の炎症は軽微だった。P. acunes菌抗原では病変は見られなかった。50%エタノール接種対照群では変化は見られなかった。北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センターにおいては、エタノール濃度を50%から30%に低下させて同様のマウス感作並びに接種を行った。東都医療大学および東京医科歯科大学の実験と同様の病変の再現をすることができたが、再現性がやや低下していた。TNBSを用いた従来のクローン病モデルでは抗原やハプテンが腸粘膜バリアを貫通しやすくするために50%エタノール溶解抗原が用いられてきた。エタノール濃度を低下させて再現性を高める条件検討を実施している。麻布大学においては昨年度に続いてラットを用いた全層性腸炎の再現試験を継続した。本年度はエタノール濃度を30%に低下させて、結腸感作時間を1分間に短縮した所、病変の再現性が向上した。しかし、筋層病変や病変の強さは50%エタノールよりもやや軽度であった。テネシー大学の研究協力者らはエタノール抽出ヨーネ菌抗原の構造解析と有機化学合成に成功し本邦でも実験を継続中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では従来全く知られていなかった、抗酸菌感作による全層性腸炎をマウスに前感作後に結腸内に導入することで再現できることを報告してきた。 実験の再現性を担保するために担当大学以外の実験施設においても同様ないし一部改変した感作実験をindependentに実施して、本実験系の再現性を確認することができた。 ヨーネ菌DNAの病変形成ないしは修飾作用についての実験予定などが当大学の実験室の改修工事のために実施が遅れている。また、実験病変の解析についても同様の理由で遅滞している。次年度にはすでに改修が完了した実験室においてこれらの遅れを取り戻す予定である。 研究協力をしているテネシー大学の研究者らに招聘されてテネシー州メンフィスにてヨーネ菌脂溶性抗原の構造解析や有機化学合成の経過についての情報交換と、本邦での一定程度の実験に用い荒れる合成サンプルを入手できたので、新年度にインビトロ、インビボでの腸炎惹起性と細胞株や分離培養細胞に対する作用を調べる事ができるようになった。 マウスの実験に用いているヨーネ菌抗原の食品汚染について、東京農大と共同研究を行い輸入、国産乳製品中にヨーネ菌DNAがかなり含有されており、ヨーネ菌抗原の人体への暴露が明らかであることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
研究担当者の研究所からの大学への異動、新任地の研究条件の整備により研究推進がやや遅れたが、研究計画に示した脂溶性抗原を中心としたヨーネ菌抗原のクローン病様全層性腸炎の惹起機構、生体への作用の解明を進める。研究計画の変更も推進上の問題も現在ははなし。
|