研究概要 |
平成23年度の研究実施計画として設定した検討課題に対して以下の成果を得た. (1)3つの細胞培養区画を有するMEA(MicroElectrode-Array)基板の設計と製作 30μm角のマイクロ電極を中心間隔150μmで4x5個配置した区画2ヶ所,4x6個配置した区画1ヶ所からなるMEAパターンを設計,試作した.軸索の成長,シナプス結合形成の視点から,区画間の距離は500μmとした.PDMS(polydimethylsiloxane)を利用して細胞培養チャンバとチャンバ間を連結するトンネル構造(細胞体をチャンバ内に保持した状態で軸索のみ透過し標的組織にシナプス結合を形成することを目的とする)を製作,MEA基板上に位置を合わせて固定するプロセスとした. (2)パターン化基板上での共培養系構築 1枚のMEAに複数の細胞培養区画を有する基板上に異なる組織から採取した細胞群を播種,マイクロトンネルを介して両者の結合を導く共培養を試みた.ββ-tubulin,synapsin Iを利用した免疫化学染色により,マイクロトンネル内での突起の成長,伸長した突起から標的組織へのシナプス結合形成を確認した. (3)脳幹神経核から採取した細胞群の培養と電気活動計測 青斑核(locus ceruleus : LC,ノルアドレナリン作動性)と縫線核(dorsal raphe nucleus : DRN,セロトニン作動性))を含む脳幹組織を新生Wistar Ratから採取し,MEA基板上で培養した.自発電気活動が発生し,培養日数の経過と共に活動パターンが変化することを確認した.
|
今後の研究の推進方策 |
培養細胞群の自発電気活動計測経時変化観測,誘発応答記録を主要実施項目と考えており,今後はこれを中心に実験を進めていく.また,てんかん発作に対する神経調節物質の作用に注目する視点から,てんかん発作のin vitroモデルを確立しておくことが有用と考え,pilocarpine,kainate等の化学物質を利用したモデル系構築を新たに試みる.細胞周囲溶液環境の制御手法についても並行して検討する.さらに,個別の脳幹神経核の確実な採取と長期培養条件確立に向けた検討を引き続き実施する。
|