研究課題/領域番号 |
23240069
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒木 勉 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50136214)
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研究分担者 |
橋本 守 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (70237949)
福島 修一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40362644)
新岡 宏彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70552074)
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キーワード | カソードルミネッセンス / ラマン顕微鏡 / 蛍光量子ドット / 分子イメージング / 細胞培養 / in vivo生体計測 |
研究概要 |
複雑系の中から所定の生体分子を生きたまま、リアルタイムで認識し、その形態・高次構造および変化をイメージングする高機能「分子イメージング顕微鏡技術」を開発し、培養細胞の評価に応用する。23年度の主点は高空間分解顕微鏡の開発であり、SN比の向上、非侵襲性の向上、分解能向上、測定時間短縮などの性能向上に取り組んだ。そこで現有の電子顕微鏡(SEM)にカソードルミネッセンス(CL)装置を取り付けて、細胞のカソードルミネッセンスを用いた細胞の超解像イメージングを開始した。CLを得るためにはナノ蛍光体粒子が必要である。そこで高効率な発光を示し、かつ、それぞれ赤色、緑色、青色に光る三種類のナノ蛍光体の作製を行なった。また、それらのナノ蛍光体を、蛋白質を一つ一つ観察可能な10 nmレベルの空間分解でCLイメージングする事に成功した。さらに、上記ナノ蛍光体を細胞内に取り込ませ、細胞内においてもナノ蛍光体のCLイメージングに成功した。 この作業は単年度ではなく、全期間にわたって行い、これまでに開発したラマン顕微装置へフィードバックすることで信頼性を高める。さらにSHG顕微鏡では人に対する皮膚のin vivoを実施して、光老化におけるSHG光強度の変化を追跡するなど、真皮のコラーゲン計測を軌道に乗せた。培養細胞系の観測においてはコラーゲンゲルと細胞との機械的な相互干渉を可視化するため、高速偏光分解システムを導入した第2高調波発生顕微鏡を開発した。本装置を用いてコラーゲン配向状態の定量評価を中心に研究を展開し、再生医療における培養細胞の品質制御につなげた。このような分子イメージング顕微鏡は,従来にない全く新しいものであり、理工学分野におけるポテンシャルが高まる。また本手法はライフサイエンス分野のみならず、高機能液晶開発、半導体の品質評価など他分野へも応用できるため波及効果がきわめて大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規ナノ蛍光体を作成し、カソードルミネッセンス(電子線照射によって誘起される発光)顕微鏡に適用することにより、電子顕微鏡レベルの高空間分解能と、複数蛋白質種の識別能力を併せ持つ顕微鏡手法を示すことができ、所期の目標を達成した。また偏光分解第2高調波発生顕微鏡を用いたコラーゲン配向状態の定量評価にも成功するなど順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
CL顕微鏡のさらなる性能向上を目指して、ナノ蛍光粒子の微粒化をはかる。通常の方法では微粒化が困難なため、パルスレーザー照射による微細化を行う。また蛍光分光による識別を図る。さらにそれぞれのナノ蛍光体を標的蛋白質に取り付けることができるよう、ナノ蛍光体を用いた免疫染色技術の確立を目指す。 そのために分光器を購入する。ラマン顕微鏡に関しては、別のプロジェクトによっても性能向上を試みる予定であり、本プロジェクトとの相補化によっていっそうの性能向上が見込まれる。SHG顕微鏡については2光子レーザー顕微鏡と結合することで、蛍光とSHGの同時計測を行う。そのために、備品として多光子検出モジュールを購入する。その装置を用いて培養細胞に対する計測を行う。
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