研究課題/領域番号 |
23240072
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋田 充 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20135594)
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研究分担者 |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30243041)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリー / がん治療 / がん微小環境 / ナノ粒子 / ターゲティング |
研究概要 |
がん細胞の増殖には,免疫細胞の浸潤、線維芽細胞の増殖などを伴って形成されるがん組織に形成される微小環境が重要な役割を演じることが知られるようになってきた。本研究では,このがん微小環境に特有の生理的環境に着目し一般組織との違いを利用して効果的な治療を実現できるドラッグデリバリーシステムの開発を目指している。一つは,過度のストレス環境下がん細胞が高発現するGRP78をターゲットとするアプローチである。GRP78 siRNAによりGRP78の発現をノックダウンするとCHOPの発現が上昇し,アポトーシスが誘導されることが明らかとなった。しかしながら,siRNAに対する感受性はがん細胞の種類によって異なり,必ずしもGRP78の発現レベルとは相関しないことが示された。がん組織中の腫瘍関連マクロファージにはがん増殖を促すM2型表現型のものが存在する。前年度,DNA decoyを用いてNF-kappaBの活性を抑制することで,マクロファージの表現型をM2型からM1型に転換することが可能であることを示したが,本年度,マンノース修飾バブルリポソームとの複合体を利用し超音波を併用することで,NF-kappaB decoyの細胞内取り込みが促進でき,サイトカイン発現プロファイルで象徴されるM1型への表現型転換を顕著に促進できることが明らかとなった。一方,低用量のdoxorubicinはNF-kappaBやAP-1の活性化を促し,免疫細胞を刺激できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroにおける詳細な解析からGRP78やNF-kappaBが治療ターゲットとなることが確認されたほか,マンノース修飾バブルリポプレックスによりNF-kappaB decoyなどがin vivoでも効果を示すことが観察された。
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今後の研究の推進方策 |
担がんマウスにおいて,腫瘍増殖に対する抑制効果を確認する。また,サイトカインやアルギナナーゼなど特徴的な分化マーカーについて体系的に評価し,治療効果発現に対するメカニズムを解析する。また,doxorubicinを内包するポリエチレングリコール修飾リポソームを作成し,メラノーマ抗原に対するDNAワクチン効果に対する増強作用を評価するとともに,効果増強のための投与方法の最適化について検討する。
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