研究課題/領域番号 |
23240075
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
河野 健司 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (90215187)
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研究分担者 |
青木 伊知男 放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (10319519)
渡来 仁 大阪府立大学, 生命環境研究科, 准教授 (50175139)
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キーワード | ナノ医療 / 薬物送達 / イメージング / 自己組織化 / ワクチン |
研究概要 |
平成23年度は、温度応答性デンドロン脂質の作製とその集合体の機能評価について検討した。第2世代第3世代のデンドロン脂質を合成し、その末端に温度応答性基としてイソブチルアミド基やジエチレングリコール基を結合した。これらの温度応答性基を有するデンドロン脂質の集合体を水中で形成させた。この集合体は、ある特定の温度において劇的に凝集し鋭敏な温度応答性を示した。また、この集合体は低温においては数10から数100nmのベシクルを形成するが、転移温度以上においては棒状ミセル構造に変化し、温度に応答して構造転移する新しいタイプの温度応答性ナノ粒子を構築することに成功した。この温度応答性デンドロン脂質ベシクルは、転移温度以下においては、細胞との相互作用は弱いが、転移温度以上に加温すると強く疎水化して構造転移するため、細胞膜に強く吸着して効率よく細胞内に取り込まれることがわかった。このような特性を利用することで、体外からの局所加温によって、劇的に薬物放出したり、標的組織に吸着して細胞内に薬物導入する高性能運搬体となることと期待できる。また、カルボキシル基を末端に持つ新規pH応答性デンドロン脂質を合成し、卵黄レシチンとの混合ベシクルを作製した。このベシクルは、酸性条件下で不安定化して内包物を放出した。また、pH応答性デンドロン脂質の末端基の疎水精度を変えることで、応答pH領域を調節でき、そ0結果、細胞内に取り込まれた後、初期エンドソーム、後期エンドソーム、リソソーム内のいずれかにおいて澤択的に内包物を放出できる、オルガネラ選択的デリバリーベシクルとして利用できる可能性が示された。一方、ガドリニウムキレートを結合したデンドロン脂質を用いた腫瘍選択性ベシクルを作製した。腫瘍特異性リガンドであるトランスフェリンを結合することで、腫瘍集積性が向上することがMRIによって確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度応答性デンドロン脂質およびpH応答性デンドロン脂質の合成とそれらを用いた温度応答性ベシクルおよびpH応答性ベシクルを作製し、従来にない新規機能(温度応答構造転移機能)や従来のものに比べて高性能(応答pH領域の精密調節)に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き高性能なデンドロン脂質の創成を行うとともに、すでに開発した温度応答性デンドロン脂質およびpH応答性デンドロン脂質を用いて、実際のナノ医療への展開を推進する。具体的には、温度応答性薬物送達システムおよび免疫治療用ワクチンシステムへの適用について研究を進める。
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