研究課題/領域番号 |
23240075
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
河野 健司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90215187)
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研究分担者 |
青木 伊知男 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (10319519)
渡来 仁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (50175139)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノバイオ |
研究概要 |
本年度は、以下の項目について研究を進めた。 (1)遺伝子ベクターとしての新規デンドロン脂質の開発。種々の世代のポリアミドアミンデンドロンと飽和型および不飽和型アルキル鎖を有する各種新規デンドロン脂質を合成し、その分子構造と遺伝子導入活性との相関について検討した。その結果、デンドロン部位の世代数の減少とともに遺伝子導入活性が上昇すること、飽和型よりも不飽和型の長鎖アルキル基をもつデンドロン脂質の方が高い活性をもつことがわかった。さらに、デンドロン末端部位のアルキル基の炭素数を調節することで、最も高い遺伝子導入性を発現する新規遺伝子導入用デンドロン脂質を開発した。 (2)細胞内デリバリー機能デンドロン脂質。デンドロン脂質末端部位に種々の酸無水物を反応させることでpH応答型のデンドロン脂質を作製した。疎水性スペーサーを介してカルボキシル基を結合したデンドロン脂質は弱酸性で鋭敏に脂質膜を不安定化することを明らかにした。このpH応答型デンドロン脂質は細胞内デリバリーシステムへの応用が可能である。 (3)MRIのためのデンドロン脂質造影剤。ガドリニウムを担持したデンドロン脂質をリポソームに組み込むことでナノ粒子型のMRI造影剤を作製した。この腫瘍特異性を向上するために、腫瘍特異性リガンドとして、トランスフェリン、ハーセプチン、cRGDの利用を検討した。これらのリガンドを組み込むことで標的細胞によるリポソームの取り込み量は著しく高まることがわかった。トランスフェリンを担持したリポソームMRI造影剤を担癌マウスに投与して腫瘍造影を試みたところ、腫瘍造影効果はむしろ低下した。トランスフェリンを結合することで他の組織に対しても親和性が高まったためと考えられる。 (4)温度応答型デンドロン脂質。オリゴエチレングリコールをデンドロン部位末端に結合することで温度応答性デンドロン脂質を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、(1)高活性遺伝子ベクター型デンドロン脂質、(2)MRI用ガドリニウムデンドロン脂質、(3)細胞内デリバリー用pH応答型デンドロン脂質、(4)生体適合性に優れる温度応答性デンドロン脂質、の開発に成功している。また、このプロジェクトにおいて、3件の特許出願がなされている。研究は順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに上記のような新規デンドロン脂質を開発した。今後さらに、その有用性を実証することを目指す。高活性遺伝子ベクター型デンドロン脂質については、その高活性を活かしてiPS細胞作製用ベクターとしての応用について研究を展開した。また、ガドリニウムデンドロン脂質については、これを用いることでナノ粒子型MRI造影剤という新しいMRI造影剤の開発に結び付いた。この造影剤は特に腫瘍造影に適しているため、その腫瘍特異的機能の先鋭化を目指す。さらに温度応答性やpH応答性といった刺激応答性デンドロン脂質は、薬物送達の精度を上げるための機能素子として有用である。今後、これらを総合化することで、体内への生理活性分子の標的輸送とそのモニタリングが可能な多機能性送達システムを組み上げ、パーソナル医療への適用について検討を重ねたい。
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