研究課題/領域番号 |
23240084
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上月 正博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70234698)
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研究分担者 |
伊藤 修 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00361072)
斉藤 喬雄 福岡大学, 医学部, 教授 (10125552)
伊藤 貞嘉 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40271613)
森 信芳 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50463790)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 循環器・高血圧 / 腎臓 / 組織・解剖 |
研究概要 |
慢性腎不全において、適切な運動は腎保護、運動耐容能の改善など好影響をもたらすことが示唆されているが、この腎保護効果の機序は明らかではない。nitric oxide (NO)は血圧、腎機能調節に関与し、腎障害の病態進展に関わることから、慢性腎不全に対する運動の効果にNO産生系の関与があるかを検討した。Wistar-Kyotoラットを用いて、5/6腎摘除慢性腎不全モデルを作成し、運動はラット用トレッドミル装置を用いて8週間の長期運動(EX)を施行した。コントール群に比較して、慢性腎不全群では収縮期血圧は有意に上昇し、EXにより有意に低下した。しかし、尿蛋白量や血清クレアチニン値にはEXによる有意な改善は認められなかった。NO代謝物のNO2+NO3 (NOx)は、血漿ではコントール群、慢性腎不全群、EX群の間に有意な差はなかったが、尿ではコントール群と慢性腎不全群の間に有意な差はないものの、EX群では有意に増加した。収縮期血圧と尿NOx排泄量には負の相関が認められた。NO合成酵素(NOS)活性は、慢性腎不全群ではコントール群と比較して低下傾向を、EX群では慢性腎不全群と比較して増加傾向を認めた。一方、内皮型NOS (eNOS)蛋白発現は、慢性腎不全群ではコントール群と比較して有意に増加し、EX群では慢性腎不全群と比較して低下傾向を認めた。以上の結果から、慢性腎不全モデルラットにおいて、運動は、尿蛋白量や血清クレアチニン値を改善させる前から血圧を低下させ、腎NO産生を亢進させることが明らかになった。腎NO産生とeNOS蛋白発現の結果には解離があることから、腎不全におけるeNOS蛋白リン酸化、アンカップリング、内因性NOS阻害物質等によるeNOS不活性化が示唆され、長期的運動はこの腎不全におけるeNOS不活性化を改善するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5/6腎摘除慢性腎不全モデルラットを用いた基礎研究については、長期的運動および薬剤併用の有効性を明らかにすることができたが、透析患者を対象とした臨床研究については、患者の研究エントリーを開始した段階である。
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今後の研究の推進方策 |
5/6腎摘除慢性腎不全モデルラットを用いた基礎研究については、長期的運動による腎保護効果の機序をさらに明らかにしていく。透析患者を対象とした臨床研究については、患者のエントリー数を増やすと共に、運動療法や骨格筋電気刺激を実施してデータ収集に努めていく。
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