<目的> 本研究では、身体活動の多寡に関連する要因を検討することを目的とし、郵便番号を使って評価された自宅近隣の環境要因と身体活動の横断的関連(郵便番号研究:安永明智)と、身体活動に関連する疲労・免疫要因について(免疫研究:矢野博己)検討した。 <方法> 郵便番号研究:長野県佐久市内在住の30~84歳の男女1274名が参加した。環境要因は、佐久市内のコンビニ、銀行、郵便局など生活に関連する17種類の施設について、郵便番号をもとに情報を得た。身体活動量を加速度計で定量し、両者の関係を横断的に分析した。 免疫研究:4週齢のC57BL/6雄性マウスに、野生型マウスで安静条件を負荷したマウスから採取した便と、TLR5遺伝子欠損で運動習慣のあったマウスの便を移植した。その後、回転ゲージを用いて自発運動量の測定を7日間行った。 <結果> 郵便番号研究:5000歩を基準とした1日あたりの歩数を従属変数、年齢、性別、BMI、環境要因を独立変数として、多重ロジスティック回帰分析を実施した結果、65歳未満のグループでは、いずれの変数も統計学的に有意な関連を示さなかった。一方、65歳以上のグループでは、自宅近隣のスーパー・コンビニエンスストアの数(1.40; 1.01-1.93)及び郵便局・銀行の数(1.39; 1.02-1.88)が統計学的に有意な正の関連を示した。 免疫研究:便移植の結果、野生型マウスで安静条件を負荷したマウスから採取した便移植によって、移植を受けたマウスの自発運動量は、TLR5遺伝子欠損で運動習慣のあったマウスの便を移植されたマウスよりも優依かつ顕著に身体活動量が少なかった。 <結論> 高齢者の歩行は買い物や生活に関する近隣施設の有無が影響することが示唆された。腸管免疫が身体活動量に関連し、それが腸内細菌の変化を介して調整される可能性が示唆された。
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