研究課題/領域番号 |
23240090
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
瀬尾 和哉 山形大学, 教育文化学部, 教授 (60292405)
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研究分担者 |
鈴木 省三 仙台大学, 体育学部, 教授 (00179219)
太田 憲 慶應義塾大学大学院, 政策メディア研究科, 特任准教授 (10281635)
下山 幸治 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (80447185)
仰木 裕嗣 慶應義塾大学, 政策メディア研究科, 准教授 (90317313)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スポーツ工学 / コンカレント最適化 / 風洞実験 / 円盤投 / ボール / スキージャンプ |
研究概要 |
スポーツにおける用具とスキルを並列に取り扱い、最適な用具とスキルを明らかにすることにより、競技力の向上を目指している。本研究で用いている一連の手法は、すべての競技へ適用可能であると考えている。テストケースとして、円盤投やスキージャンプを対象とし、その際に生じた問題を認識し、ハードルを越えるためのノウハウの蓄積を行っている。以下、具体的に説明する。 ①最適化手法の検討:本研究では、遺伝的アルゴリズムを使って、最適化している。遺伝的アルゴリズム(GA)は競技に精通していなくてもある程度の良い解を得られる手法である。我々は、すべての競技に精通していないため、GAで最適化することは妥当なやり方であると認識している。現在、GAの中でもNSGAとARMOGAと試している。両方法ともに質の良い解が得られているが、チューニングの仕方によっては、ARMOGAの方がよい収束性を示している。 ②同時最適化:例えば、円盤の質量と慣性モーメント(用具)、及び、投出し条件(スキル)を同時に最適化すると、スキルのみの最適化よりも同時最適化の方が競技力が向上(飛距離が伸びた)した。これより、「今後のスポーツ工学では、用具とスキルを同時に最適化、をしなければならない。」といえる。 ③個別競技への適用:我々は、上記した一連の手法と同手法で、スキージャンプ飛行の最適化も行っている。最適化手法自体は、全く問題がないとの結論を得た。各競技ごとに用具がことなり、また投出し条件等のスキルの拘束があるため、それらを数値として表現できれば、個別競技への応用が可能な状況になった。ただし、この数値化のハードルは低くはない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最適化手法をスキージャンプや円盤投に応用することにより、スポーツに対する最適化手法の実用性が証明されつつある。これまでの実績からいって、我々が使用している最適化手法は競技によらず応用可能である。最適化をするためには、対称物体に働く空力特性を知る必要がある。現在は、このハードルを越える事に努力をシフトしている。このための作業を進めるうちに1.の課題が明らかになった。2.は研究ペースが遅れる原因になったが、平成25年度は完動状態でスタートできたため、順調な実験が期待される。 ①CFDに関して 円盤周りのメッシュの切り方によって、計算値(抗力係数、揚力係数、ピッチングモーメント係数)が異なる結果を得ている。自動メッシュ切り機能が使えないことが明らかになった。現在、マニュアルで様々なメッシュの切り方を試しながら進めている。計算値は徐々に実験値に近づきつつある。 ②PIVに関して 震災の影響で平成23年度末に納入していただいたPIVシステムを平成24年度から本格的に稼働する予定であったが、実験を進める内にソフトと高速カメラにバグがあることがわかった(実験をやっていてもデータが取れる場合と取れない場合があった)。そこで、再度、バグ取り作業を依頼し、再納品までに4カ月を要した。このため、PIVによるデータの蓄積が十分にできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
①目的関数にロバスト性を加えた多目的最適化 学会発表の質問で、ロバスト性に関する指摘を複数回受けた。ロバスト性とは、最適な条件から多少外れた条件でもそれほど性能を落とさない特性のことである。スポーツは人間がするものであるため、ロバスト性は重要な評価指標である。これを最適化の目的関数に加える。現在でも計算時間は1週間程度を要するが、ロバスト性の評価のためにモンテカルロシミュレーションをするならば、計算時間が1ヵ月以上かかる可能性が大きい。この場合には、現在使用している学内の共用計算機ではなく、研究室内に専用計算値を購入する必要が生じるかもしれない。 ②CFDの計算値を実験値と一致させる。 上記のとおり、メッシュの切り方を工夫している。ノウハウ蓄積中である。計算値と実験値が一致すれば、形状に対する応答局面を構築でき、その先の同時最適化へつながる。 ③PIV計測 平成25年度は、完動状態でPIVシステムを動かせそうである。実験データの蓄積をはかり、その結果を現象の解明に、あるいは、CFDとの比較に用いる。
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