伸張性運動後のプロテオミクスより見出した新規筋損傷マーカーについて、昨年度は酵素免疫測定法による測定系を確立し、妥当性も検証したが、今年度は関連する炎症、酸化ストレスマーカーとともにレジスタンス運動や高強度運動への適用を進め、運動・ストレス関連のバイオマーカーの汎用性について検討した。レジスタンス運動については、検討した運動条件では筋損傷マーカーの変動は認められず、炎症性サイトカイン、酸化ストレスマーカーの変動も認められなかったため、これらのバイオマーカーの運動による変動は運動強度に依存する可能性が示唆された。次に短時間高強度運動での検討を行ったところ、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのストレスホルモンの上昇は顕著であったが、筋損傷マーカーと酸化ストレスマーカーの変動は軽微であった。そこで、筋損傷と酸化ストレスを誘導する長時間の高強度持久性運動で最終確認を行う必要が生じたため、検討を進めることとなった。またマウスの疲労困憊運動モデルでも筋損傷を誘導し、骨格筋中の炎症反応との関連も検討中である。 運動による血中マイクロRNA(miRNA)の変動機序についてもマウスを用いて検討した。骨格筋サンプルは、遅筋線維から構成されるヒラメ筋と、速筋線維から構成される足底筋を採取し、血液は心臓採血によって採取した。運動を負荷しないマウスをコントロール群とし、運動直後および3時間後の骨格筋および血中のmiRNAの変動を、リアルタイムRT-PCRで評価した。その結果、すべてのサンプルでmiRNAの有意な変動が認められず、骨格筋中のmiRNAの変動を前提とした血中miRNAの変動は実証できなかった。先行研究との結果の不一致に関しては、先行研究における運動負荷時の電気刺激の影響や、採取した骨格筋の違いによる影響などが考えられた。
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