研究課題/領域番号 |
23240100
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大谷 毅 信州大学, 繊維学部, 特任教授 (00092867)
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研究分担者 |
高寺 政行 信州大学, 繊維学部, 教授 (10163221)
森川 英明 信州大学, 繊維学部, 教授 (10230103)
乾 滋 信州大学, 繊維学部, 教授 (10356496)
矢野 海児 杉野服飾大学, その他部局等, 教授 (40349147)
宮武 恵子 共立女子大学, 家政学部, 教授 (40390124)
徃住 彰文 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (50125332)
柳田 佳子 文化学園大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60409323)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ファッションアパレル / テキスタイル / 設計過程 / 製造工程 / 国際プレゼンス / メゾン / ファストファッション / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の究極のテーマは、日本のアパレルは若干の例外を除き、なぜパリ・ミラノ、ニューヨークで売れないのかを、素朴ブランド論を排し、設計・製造に遡って探ることにあった。 2012年度まではおもにアパレル(既製服に限る)につき、メゾン、ファストファッション(FF)の設計過程・製造工程を解明しようとした。2012-2013年度に、相応の準備をして、メゾンのstudio(stylisme )&atelier(modelisme)両部門関係者へのヒアリングのほか、パリ・ミラノメゾンのプロトタイプの試作を実験的に再現し、可能な範囲で画像音声に収め検討を始めたほか、ニューヨーク'sport wear'でも類似の実験に参加した。すでに指摘した日本の主流の百貨店アパレル(製造卸)にあってはstylisme 機能(本研究でいう一次設計≒創案段階)の欠如ないし弱点を、さらに追及しようとした。また、設計過程を追跡するうちに、当初に企図したごとく、①創案の具体的作業内容、および②テキスタイル選択の過程の究明に移行し、2013年度から徐々にこの問題を解くべく、Premiere Vision Paris(世界的テキスタイル展示会)での購入実験、イタリアおよび日本のテキスタイルメーカーの製造事情について調査を行い、クライアント(メゾン)との相互作用(密着営業)に相当な差異があると推定した。 一方、FFの製造工程については一部解明し、その原義は「展示会をしない」(≒完全見込生産)にあり、日本で通説にいう「はやく」はむしろ二義的で、Annual_Reportから推定される商品回転日数の根拠をみたが、しかし、その設計過程は謎であり、テキスタイルメーカー(≒サプライヤー)による製品提案以外は、テキスタイルの選択も解明できていない。その一端は、中国での調査実験が滞ったことにあり、繰越して補完する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【分野1】国際市場前提のファッション製品の設計過程・製造工程を推測にかんする作業のうち、パリメゾン・ミラノカーザ(何れも既製服)での設計過程・製造工程の実験的に再現により、このクラスの製品についてはかなり解明できた。例えば国や地域ごとに平均的な体系が異なるという制約条件に対して、物理的な制約を優先させる設計ではなく、ある程度の着心地が確保されれば、シルエットを優先して設計するなど、省略すべきところを大胆に省略し、かつ過剰品質を避けるなどの工夫により、国際展開を図っている可能性が見えている。ただし中国由来の問題については、外部要因に起因する諸般の事情から1年延びた。 ファストファッションについては、サプライヤー(≒テキスタイルメーカー)ルートはおおむね解明できたが、全体の生産設計(おそらくは大日程に相当するもの)は、中国ルートも含め今後の推論による。いわゆるチャイナプラスワン問題であるが、中国の市場は成長していることと、人件費や為替変動は既存の製造工程の採算を圧迫すること、この兼ね合いについては、製造兼小売fの特徴とするFFの解明に欠かせない。 【分野2】テキスタイルの画像情報伝達における情報工学的精緻は不可欠ではあり、実験を繰り返してるところであるが、テーマ設定の触覚絶対主義(触らなければ絶対に判別できない)は、この業界に長くかつ熟達したテキスタイル選択者にとって、選択過程の第一次的段階では、時間が優先しており、必ずしも触覚に頼るとは限らないとの結論に達しつつある。 なお、中国メーカーの製品レベルは急上昇しており、世界的に供給されていること、中国国内の市場の高付加価値が見込まれることから、製品およびテキスタイルの展示会シーズンと同期させつつ、調査が必要であり、1年延伸する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、北京・杭州等、ニューヨーク、パリの展示会で検証作業後、比較研究を行うものであるが、外的な事情により中国における調査研究が1年遅れていたため、その分を延伸して本年度に行う。 2014年4月から8月にかけて北京などで予定している研究機関と打ち合わせ及び準備を行い、仮想製品仕様とスティリスタ役をきめるとともに、8月にテキスタイル選定を行い、 8月のテキスタイル展示会で検証を行う。この間に、可能な範囲で中国の典型的なテキスタイルメーカーをヒアリング・設計過程・製造工程の調査を行う。 9月にアパレルの設計に入り、 12月にアパレル展示会用の展示見本を制作し、2015年2月のアパレル展示会で、設計の市場適合性の検証を行う。 ファストファッションの設計過程・製造工程については、既に交渉をすすめてきた特定の研究機関の協力を求めつつ、中国における機能を確認するべく調査を行う。 その間、適宜な時点で、この研究のフィールドであるニューヨーク、パリ、ミラノとの比較を行い、各フィールドの設計過程・製造工程の特徴を取りまとめ、れにより本研究の目的である日本のファッションアパレル(テキスタイルを含む)の国際プレゼンスの乏しさの原因を究明する。
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