研究課題
基盤研究(A)
近年の研究で、食後高脂血症・高血糖が動脈硬化性疾患の独立した危険因子であることが明らかとなり注目されているが、その背景には、食後の急激な血清脂質や血糖の上昇により惹起される、"血管炎症"が重要な役割を果たしていることが知られている。そこで、本研究では、食後高脂血症・高血糖を改善する食品因子を探索し、脂質や糖質と同時に摂取することで、食後の血管炎症を抑制し、動脈硬化の進展を予防する新たな食生活スタイルの提案を目指している。初年度の本年は、高脂質食・高糖質食負荷後の血中パラメーターならびに組織における遺伝子発現の変動を明らかにすること、さらに食後高脂血症・高血糖を改善する食品因子を探索することを目的として、検討を行った。まず健常成人男性を対象に、高脂質食としてマヨネーズ30gの負荷を行ったところ、血清脂質濃度の上昇に伴い、炎症反応の指標である高感度CRP値ならびに白血球数の増加が認められた。さらに血管内皮機能の指標である血流依存性血管拡張反応(FMD)の有意な低下も認められ、マヨネーズ30g程度の負荷でも一時的な血管炎症が起こり得ることが明らかとなった。一方、高糖質負荷として、ブドウ糖75g溶液の負荷を行い、血糖、インスリン濃度とともにGLP-1濃度の変動を測定した。ブドウ糖75g溶液摂取後、白血球数の増加、sVCAM-1濃度の上昇が認められ、さらにFMDについても低下した。以上の検討より、日常の食生活で摂取可能な程度の量であっても、脂質または糖質の摂取は一時的な血管炎症を引き起こすことが示唆され、今後、それらを改善しうる食品成分の探索を目指す。
2: おおむね順調に進展している
初年度の目標であった高脂質食・高糖質食負荷後の血中パラメーターの探索について、有用なデータを得ることができた。
本年度の成果より明らかとなった高脂質食・高糖質食負荷後の血管炎症に対して、改善作用を有する食品因子を、ポリフェノールを中心に探索し、動物モデルを用いた詳細な作用機序の検討も行う。
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