研究概要 |
近年の研究で、食後高脂血症・高血糖が動脈硬化性疾患の独立した危険因子であることが明らかとなり注目されているが、その背景には、食後の急激な血清脂質や血糖の上昇により惹起される、“血管炎症”が重要な役割を果たしていることが知られている。そこで、本研究では、食後高脂血症・高血糖を改善する食品因子を探索し、脂質や糖質と同時に摂取することで、食後の血管炎症を抑制し、動脈硬化の進展を予防する新たな食生活スタイルの提案を目的としている。 前年度の成果を基に、食品因子の中でも抗酸化、抗炎症作用が期待されるポリフェノールに注目し、健常成人を対象とした摂取試験と、培養細胞を用いた実験を行なった。 ブドウ糖75 g溶液とともに果実由来のポリフェノールを摂取させ、摂取0, 0.5, 1, 2, 4時間後に採血し、血糖、インスリン、GLP-1濃度に加えて、炎症マーカーである高感度CRP、白血球数、可溶型ICAM-1、VCAM-1濃度の測定を行なったところ、血糖値の上昇に伴い、0.5時間後において総白血球数、sVCAM-1濃度の顕著な増加が認められた。さらに、血管内皮機能の指標である血流依存性血管拡張反応(FMD)は、ブドウ糖溶液単独摂取では低下が見られたが、ポリフェノールの同時摂取により改善した。また、グルコース刺激下のマクロファージ様細胞において、果実由来ポリフェノールは活性酸素種産生、炎症性サイトカインならびにマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のmRNA発現の上昇を抑制した。 これらの結果から、食後の急激な血糖上昇により血管炎症が惹起されうること、ポリフェノールにより抑制効果が期待されることが示された。
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