研究課題
近年の研究で、食後高脂血症・高血糖が動脈硬化性疾患の独立した危険因子であることが明らかとなり注目されているが、その背景には、食後の急激な血清脂質や血糖の上昇により惹起される、“血管炎症”が重要な役割を果たしていることが知られている。そこで、本研究では、食後高脂血症・高血糖を改善する食品因子を探索し、脂質や糖質と同時に摂取することで、食後の血管炎症を抑制し、動脈硬化の進展を予防する新たな食生活スタイルの提案を目指している。前年度までに、健常成人において脂肪負荷・糖負荷試験を実施し、血管炎症が惹起されうることを示してきた。本年度は、それらに対して抑制作用を有するポリフェノールの探索と、作用機序の解明を目的に、培養細胞系での詳細な実験を行った。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対して、グルコース刺激を行ったところ、活性酸素種産生の亢進、炎症性サイトカインの発現増加、単球接着の増加が認められ、いくつかのポリフェノールにより抑制された。これらの血管内皮炎症には、PKCの活性化が重要であると考えられた。また脂質代謝に重要な肝臓におけるポリフェノールの影響を検討するため、ヒト肝がん細胞(HepG2)を用いて、トリグリセリド、コレステロール蓄積を測定したところ、いくつかのポリフェノールを含む食品因子において抑制が認められ、SREBP、LXRα等の制御因子に関与する可能性が示された。本研究において、糖や脂質の代謝異常とそれらにより惹起される血管炎症に関して、ポリフェノールが有効に働く可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目標であった、食後の急激な血清脂質や血糖の上昇により惹起される血管炎症に対するポリフェノール等の食品因子の改善作用の解明について、新たな知見を得ることができた。
前年度までの成果をもとに、いくつかの食品因子(主にポリフェノール)について、ヒトを対象とした臨床試験を実施し、食後高脂血症・高血糖の改善効果ならびに血管炎症に対する影響を検討する。さらに培養細胞を用いて、飽和脂肪酸、グルコース刺激に対する食品因子の抑制効果について、詳細に検討する。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 3件)
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