本研究では、食後の血管炎症を改善する食品因子としてポリフェノールに着目して検討を重ねてきた。最終年度となる本年度は、健常成人を対象にした脂肪摂取試験を行うとともに、培養細胞実験にて更なる作用機序の解明を目指した。 前年度の検討において、ゴボウが脂質代謝に影響を及ぼす可能性が示されたため、マヨネーズを用いて脂肪摂取試験を行ったところ、血清脂質濃度の上昇は、ゴボウ摂取によって抑制されなかった。また、血清高感度CRP濃度や白血球数においては、脂肪摂取後の増加が認められなかったが、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9分泌の増加が認められた。 血管内皮細胞を用いて、グルコース刺激を行ったところ、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2やプラスミノーゲンアクチベーター(PAI)-1の発現増加が認められたが、果実由来ポリフェノールにより抑制された。また、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性低下をAkt経路を介して改善することが示された。その他、ポリフェノールを豊富に含む果実や樹木の抽出物において、血管内皮細胞における炎症抑制作用が認められた。 また、動脈硬化進展に関与する炎症の中心的役割を担うマクロファージにおけるポリフェノールの影響を検討した。RAW264細胞にリポ多糖(LPS)刺激を行い、ポリフェノールを含む抽出物を作用させたところ、炎症性サイトカインや一酸化窒素産生の増加が抑制された。この作用にはNF-κB経路の活性化抑制が関与していることが示された。 本研究において、食後の血糖や血清脂質の増加により惹起される炎症に関して、食品に含まれるポリフェノールが予防的に働く可能性が示唆された。
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