研究課題/領域番号 |
23240114
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
木島 隆康 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 教授 (10345340)
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研究分担者 |
桐野 文良 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 教授 (10334484)
上野 勝久 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 教授 (20176613)
佐藤 一郎 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (30143639)
山梨 絵美子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 近現代視覚芸術研究室, 研究員 (30170575)
林 洋子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (30340524)
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キーワード | 保存科学 / 天井絵画 / 建造物壁画 / 油彩画修復 / 絵画技法材料 / 迎賓館 / 文化財保存修復 |
研究概要 |
本研究は、国内最大級の面積を誇る、明治42年に建設された迎賓館赤坂離宮の損傷・劣化した天井絵画を、自然科学的手法によって調査し、さらに保存修復、保存科学、絵画技法材料、建造物、美術史の観点からその劣化要因を学際的に究明しようとするプロジェクトである。すでに昭和45年に大修復が全面的に行われたにもかかわらず40年を経過して思わぬ損傷・劣化が広範囲に進行している天井絵画である。 四年間を要して天井絵画全面を調査する予定であるが、一年目にあたる平成23年度は、目視観察および光学調査を中心に二部屋「朝日の間」「綾の間」を調査した。目視観察による調査では、絵画の構造および絵画技法と旧修復処置方法、劣化・損傷状態等を観察した。光学調査では赤外線反射撮影によって制作者の制作手法を確認、紫外線蛍光撮影では昭和の大修復の処置箇所を特定した。特に修復箇所は昭和の修復が大規模に行われたことを確認した。またワニスの存在も確認した。さらに、「綾の間」においては携帯型蛍光X線装置による測定によって、画布の白色地塗り塗料や、彩色に用いた顔料も同定した。劣化した修復材料の検証では現在強制湿熱劣化実験によってその影響を検証中である。天井構造調査では、最も損傷原因として危惧されている室内および天井裏間の空気層の移動であるが、昭和の修復直後、すでに天井裏全面に厚手のアルミ箔が貼りこまれて空気層移動の遮断処置によって、木摺間に生ずる損傷が抑制されている現状も確認した。現在天井裏の温湿度環境調査では、3箇所にデータロガを設置して調査は継続中である。加えて天井裏を含む木摺と梁の構造等も調査した。海外調査では、天井絵画の世界的規模を誇るフランスのヴェルサイユ宮殿、パリオペラ座の天井絵画等を視察し、さらにフランス美術史家や絵画修復家をインタビューするなど不明とされる迎賓館赤坂離宮天井絵画の制作もとをさぐった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
迎賓館側の全面的な協力のもと、月2回の現地調査が予定通り行われている。各専門の研究分担者による調査も滞ることなく調査は進行し、研究協力者の役割分担も明確な体制で滞ることなく調査検証が行われている。今回調査した二部屋について、過去の修復記録を詳細に精査し修復方法や修復材料による劣化要因をほぼ推定することができた。現在すでに修復工房によるテスト修復が別な開始されているが、本研究の成果が採用されて修復作業は実施されている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、調査研究はほぼ順調に進行し、その貴重な成果が実修復事業に役立ちはじめている。迎賓館は天井に絵画が描かれた部屋を多数持つ。そのすべてに修復処置が施されているが、その修復処置や修復材料は一様ではなく劣化現象も異なっている。今後部屋ごとの詳細な調査を続けることによって、これらの劣化要因を強制劣化実験等によっても検証し、実修復作業に適切な判断材料を提供し続ける予定である。 さらに、絵画技法材料の検証も昨年度通り行い、さらに歴史的見地から、フランスで描かれてわが国の迎賓館に設置されたとする経緯についても、まだ推定の域を出ておらず、フランスに在住する研究協力者や国内の研究協力者とともにさらに明らかにする予定である。
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