研究課題/領域番号 |
23240125
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
中村 卓郎 公益財団法人がん研究会, がん研究所・発がん研究部, 部長 (00180373)
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研究分担者 |
横山 隆志 公益財団法人がん研究会, がん研究所・発がん研究部, 研究員 (00535833)
中武 真由香 公益財団法人がん研究会, がん研究所・発がん研究部, 研究員 (40432041)
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / Hoxa9 / Meis1 / Trib1 / Bcl11a / 骨髄ニッチ / ChIP-Seq / ノックアウトマウス |
研究概要 |
Hoxa9による白血病発症に対するMeis1の促進作用はin vitroであるが、in vivoでのみ顕著に発揮される。その責任となる細胞生物学的機序と分子基盤を明らかにする目的で、Hoxa9/Meis1発現肌細胞でのホーミング活性を調べると、尾静脈注射後48時間での骨髄や脾臓での白血病細胞の生存定着がMeis1のノックアウトにより著しく低下することが明らかになった。定着しなかった細胞は、急速に死細胞となり大部分は脾臓で処理される。さらに、OP9細胞との共培養実験では、Meis1ノックアウトによりcobblestone fociが著減し、Meis1は白血病細胞と骨髄間質細胞との相互作用を促進することによって、白血病細胞の骨髄ニッチへの定着を確保する機能があることが示唆された。一方、このMeis1の分子基盤をさらに追究するために、ChIP-seq解析を行って得られたMeis1標的遺伝子候補9種について、マウス骨髄移植系を利用することにより白血病発症におけるHoxa9との協調作用を確認すると、この内Smad7とSytl1に協調作用の存在することが明らかになった。 Tribファミリーによる造血細胞の制御作用を解析すると、Trib1とTrib2は造血幹細胞からCMDに特に発現することが判明し、Trib3は骨髄で発現していなかった。そこで、Trib1及びTrib2のノックアウトマウスを解析したが、Trib1KOにより好中球の増多とC/EBP alpha蛋白の発現亢進を認めたのに対し、Trib2 KOIではこの作用は認められず、ダブルKOマウスでもTrib1 KOに準じた表現系を呈したことから、正常造血ではTrib1が主要なtribbles蛋白として機能している可能性が示唆された。また、ヒトダウン症候群関連AMKLにおいてTRIB1の機能獲得型変異を同定した。 !さらに、Trib1/Hoxa9/Meis1白血病とTrib1/Bcl11a白血病の遺伝子発現プロファイルを比較し、Bcl11aではCyclinやBcl6の発現亢進が起きる一方、Fbxl10やBcor等の転写抑制因子群の発現低下が生じることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Meis1の標的遺伝子として、かつHoxa9の協調遺伝子であるSytl1とSmad7が同定出来た。また、ヒト白血病症例でTRIB1の変異を新たに同定出来たことは、今後の診療に有益である。また、Trib1 KOマウスの解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Meis1の役割の詳細を解析するために、白血病細胞と骨髄ニッチとの相互作用におけるSytl1とSmad7の機能をさらに解析する。特に細胞接着因子制御機構に着目する。また、Trib1/Trib2ノックアウトマウス骨髄細胞に白血病原因遺伝子を導入し、Trib経路の種々の白血病遺伝子経路に対する役割を、特にRASIMAPK経路に焦点を置いて解析する。Trib1/Bcl11a白血病の遺伝子発現プロファイル解析から、Bcl11aの転写制御機構の解析を進める。
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