研究課題
Hoxa9の過剰発現は骨髄細胞をin vitroで効率良く不死化するが、in vivoでの白血病発症には協調因子のMeis1の共発現が不可欠である。前年度までに、Meis1のin vivoにおける協調作用は白血病細胞の骨髄へのホーミングと定着能、さらに間質細胞との相互作用に影響していることを明らかにした。Meis1の標的遺伝子の中でこれらの作用を担う分子を解析した結果、Sytl1/Slp1が白血病細胞の骨髄での定着に関与していることが示された。Sytl1は、Slpファミリーに属し、Rab27a/bと会合して細胞内の小胞輸送を促進することが知られている。Sytl1により細胞外輸送が促進される分子の候補として、骨髄内でAML細胞表面に増加する分子であるVCAM1、CD41、CD162を、またMeis1の存在下で顕著にエクソソーム内に認められる分子CD11a、CD47、CD97を、さらに受容体チロシンキナーゼのFlt3、c-kitを選別し、現在検証中である。また、ヒトAML症例においても、SYTL1はHOXA9及びMEIS1の発現と同様の傾向を示すことから、マウスとヒトで共通の強い協調作用が示唆された。一方、Sytl1と同じくMeis1の標的遺伝子であり、Hoxa9のin vivoにおける白血病発症を促進するSmad7はTGF-betaシグナルの増殖抑制効果を解除する役割を担っていることが示された。Trib1の白血病におけるシグナル分子としての役割を明らかにするため、BCR-ABL及びFLT3-ITDに誘導される骨髄性白血病においてTrib1 KOの効果を検討している。また、Trib1 KOによって生じるC/EBPaの作用増強を調べるために、C/EBPa、Hoxa9、Meis1によるDNA結合部位を網羅的に明らかにした。
3: やや遅れている
Sytl1の機能解析において細胞内輸送の対象となる分子の同定が完了していない。現在、候補分子を絞っており、平成25年度には同定が完了しSytl1の白血病における機能的意義が明らかになるものと思われる。また、Trib1のAMLにおけるシグナル分子としての役割や、Trib1とBcl11aの協調作用についても解析がやや遅れるが、現在結果が出始めており、本年度中に成果がまとまる予定である。
白血病幹細胞の骨髄ニッチにおける挙動に対するMeis1の機能的重要性を明らかにするべく、Sytl1とSmad7に焦点を当てて研究を推進する。一方で、Trib1及びBcl11aの機能解析を進めて白血病発症における転写調節機構とシグナル調節の包括的理解を得る。
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