研究課題/領域番号 |
23240126
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
目加田 英輔 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (20135742)
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キーワード | HB-EGF / EGF受容体 |
研究概要 |
本研究課題では、HB-EGFの癌における役割と分子機構の解明、新たな分子標的治療法の探索を目的としているが、平成23年度は癌ー癌間質相互作用におけるHB-EGFの役割解析およびHB-EGF CTFの細胞内移行と分化抑制・腫瘍形成との関わりについて詳細な解析を行った。 (1)癌ー癌間質相互作用について 癌の悪性化に癌細胞と癌間質との相互作用が重要であることが知られている。子宮頸癌におけるHB-EGFの発現を調べたところ、HB-EGFが癌細胞ではなく癌細胞の周囲に存在する繊維芽細胞で発現していることを明らかにした。子宮頸癌細胞と子宮頸癌組織から分離した癌間質繊維芽細胞(CCF)を用いた共培養系を構築し調べたところ、間質繊維芽細胞はHB-EGFを合成・分泌し子宮頸癌細胞の増殖を促すと同時に癌細胞のPDGF合成を誘導しており、子宮頸癌細胞ではPDGFを合成し間質繊維芽細胞でのHB-EGFの発現を誘導しているという相互依存関係にあることが明らかとなった。また本研究より、子宮頸癌の治療にHB-EGF阻害剤とPDGF阻害剤併用の有効性が示唆された。 (2)HB-EGF CTFの細胞内移行と分化抑制・腫瘍形成との関わりについて HB-EGF CTFが細胞内で転写因子NFAT2に結合しNFAT2の核移行を抑制していることを明らかにした。HB-EGF CTF の細胞内移行およびNFAT2結合への責任領域をHB-EGF CTFの変異体を多数作製し、それぞれの責任領域を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
癌ー癌間質相互作用については当初予定よりも速いペースで研究が進行し、その成果を論文にまとめることができた(Cancer Res. 71:6633-6664, 2011.)。しかし、HB-EGF CTFの細胞内移行と分化抑制・腫瘍形成との関わりについては、実験で使用していたHB-EGF発現ベクターのエピトープタグが実験結果に影響している可能性が示唆されたために、進行していた実験を一時中断しタグの影響の是非を点検した。結果的には当初計画通り遂行して問題ないことが判明したが、このために6ヶ月遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
HB-EGF CTFの細胞内移行と分化抑制・腫瘍形成との関わりについては、上記のように進行が予定より遅れているが、方向性としては間違っていないので、スピードアップを計りながら当初の実験計画を進める。
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