研究課題
細胞増殖因子HB-EGFは生体にとってきわめて重要な因子の一つで、その欠損は心臓弁や肺の形成異常、心室の拡張など広範な異常を示す。HB-EGFの発現の亢進も種々の疾病の原因となり得るが、その中でもとりわけ重要なのは癌との関連である。HB-EGFは種々の癌で高発現し、癌細胞の増殖・浸潤・転移・予後、あるいは抗癌剤耐性と深く関わっており、癌の分子標的として注目が集まっている。本研究課題は、HB-EGFの癌における役割と分子機構の解明を進め、新たな分子標的治療法の開拓を目指すものである。癌細胞においてsHB-EGFは増殖や細胞運動を強く亢進させる。一方、我々の研究で、発生過程の心臓弁ではsHB-EGFは増殖抑制因子として働くことが明らかとなっている。同じ因子がなぜ相反する作用を示すのか、この理由を明らかにすることは、HB-EGFを高発現する癌の新たな治療法開発に新たな道を拓く可能性がある。この様な考えで、今年度はsHB-EGFによる増殖抑制作用について、詳細な解析を行った。はじめに、マウス胎児由来の将来弁間質細胞となる組織を切り出し、Ex vivoで弁間質細胞の増殖を解析するシステムを確立した。その結果、確立したシステムでもsHB-EGFは増殖抑制を示すことが明らかとなった。樹立した実験系でレトロウィルスを感染させ、弁間質細胞内に外来の遺伝子を発現させる手法を完成した。また確立した手法を用いて、sHB-EGFによる増殖抑制にはp38MAPKおよびJNKが関わっていること、EGFRおよびErbB4が関与していることを明らかにした。また、細胞レベルでより詳細に解析するためにin vivoと同様の性質を維持した弁間質由来細胞株の樹立を試みたが、樹立できた細胞ではsHB-EGFに対する応答性を失っており、目的とする細胞株の樹立はできなかった。今後は弁間質由来細胞にこだわらず、sHB-EGFにより増殖抑制を示す細胞株を探索し、sHB-EGFによる増殖抑制作用に関する解析を目指す。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Worm
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